コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年5月12日付け

 いよいよブラジル代表メンバーが発表され、サッカーのW杯南ア大会があと1カ月に迫ってきた。サントスのガンソ選手らは選にもれたが、これから雰囲気が盛り上がることは間違いない▼W杯の3カ月後には大統領選挙が控えており、当国においてこの二つの〃国民的祝典〃は連動している。W杯で先進諸国をやっつけて一時的なナショナリズムの快感を味わった国 民は、すっかり選挙に向けて心の準備体操を終えている▼W杯直後の7月から開始となる選挙運動では、投票動向調査のポイントの上下に一喜一憂し、テレビ討論会はまるで決勝戦のように緊迫し、気がついたらもう10月だ▼最近ふと思ったのだが、W杯で優勝した年には功績を残す大統領が選ばれる傾向がある。24年ぶりに4度目の優勝を飾った94年米国大会の年にはFHC大統領が選ばれ、現在に続く経済政策の基礎を作った。5度目となった02年日韓大会の年にはルーラ大統領が選ばれている。この頃からBRICsが騒がれるようになった。とすれば、もし今年6度目の優勝をすれば、セーラとジルマどちらが選ばれるか▼思えば、初優勝の58年、2度目の62年の後、3度目優勝は70年だった。これはまさに〃ブラジルの奇跡〃の加速期、絶頂期と重なる。しかし、次の大会の頃から石油ショックで経済は落ちはじめ〃失われた10年〃を迎えた▼W杯3回優勝を一パターンとするブラジル独自の経済盛衰理論があれば、6度目の優勝が絶頂期で、その次の大会では下降線となる。とすれば、14年のブラジル大会で必勝を期して現在の好景気を長引かすには、今回あえて優勝しない方がいいかも?!(深)