コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年5月14日付け

 科学雑誌『Nature』の4月7日号によれば、世 界中で日本人の腸内にある特定のバクテリアにしか、藻細胞(海草など)の細胞壁を分解できる酵素がないのだという。平たくいえば海苔とか昆布を消化するのに役立つ酵素だ。海岸線が多く、昔から新鮮な海草を食べてきた日本人の腸内では、いつの間にか細菌が海草を分解しやすいように進化したらしい▼これを裏返せば、一般に西洋人の腸は海草を分解できない。また北欧人は腸内に牛乳を消化する特別な酵素を持っているとの研究もかつてあった。日本人には牛乳でお腹を下しやすい人がいるが、北欧人には滅多にいないというのでお互い様ともいえる▼環境に適応し進化した種が増えるという考え方は興味深い。というのも、どうして移民には、日本の同年代に比べて元気な人が多いのかと、常々疑問に思っていたからだ。例えば県連ふるさと巡りに同行した時も、80代でも夜行バスで移動して、若者でも音を上げるような日程をこなし、なおかつ旺盛な食欲までみせる人ばかりでいつも驚いている▼「移民」という種類の人々は、おそらく一般の日本の日本人より生命力が強い。ブラジルという異国で生活する精神的ストレス、食文化や気候風土の違いという肉体的ストレスに耐えられた人だけが生き残ってきたからだと思う。耐えられなかった人は帰国するか病気になっている▼これは良い悪いとかレベルの高低ではなく、傾向を推測しているにすぎない。それを延長すれば、あるていど適応した一世同士の配偶者から生まれた二世は、環境への適応度がさら高い世代といえる。誰かこんな「移民進化論」を唱えませんか。(深)