コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年5月20日付け

 日本におけるラーメンの異常な進化ぶりに驚く戦後移住者の声を聞いたことがある。かつて中華料理の一メニューとしての「支那ソバ」でしかなかったものが現在、東京には専門店が4千を超えるのだから当然だろう。横浜にあるラーメン博物館の展示に、その人気の理由の仮説があるとか▼60年代に入り、外国食が高級となる一方で、ラーメンは質素な時代へ回帰する料理になった―とNYタイムズで読んだ。若者にとってブームの動向を敏感に読み取ることが、流行を察知していることを示すとの見方も。記事では、アメリカ人によるブログも紹介されていた▼ブラジルでLAMENといえば、日清でも「MIOJO」(明星)だ。袋に入ったまま麺を砕き、スープのようにスプーンで口に運んでいるのを見たときは衝撃を受けたが、国民的インスタント食と言ってもいいだろう。もちろんリベルダーデの専門店は、いつも行列だ▼サンパウロで日本酒を売り込む某酒造メーカー関係者から「サンパウロの日本食事情は80年代のアメリカと似ている」と聞いた。現在では600銘柄があることを挙げ「日本食の多様化で必ず流行る」と鼻息が荒かった。その線でいけば、ラーメンも有望だ。大都市では人気らしいし、そういえばNYタイムズの記事も「本場ルポ」仕立てだった▼先日、エスタード紙で紹介された日本の郷土食。アメリカにもなく、当地でも継承されていない。郷愁が作用する食文化と言える。県連「日本祭り」でも沖縄ソバや博多ラーメンは人気。パスタしかりヤキソバしかり、マルコポーロを引くまでもなく、麺は文化を超えた文明か。(剛)