北米ロスで在外投票シンポ=ネット投票導入の要請へ=海外の投票率上昇めざし

ニッケイ新聞 2010年7月1日付け

 海外の有権者の投票率アップをめざす「海外有権者ネットワーク・ロサンゼルス」(高瀬隼彦会長)が6月23日(現地時間)、ロサンゼルスで公開シンポジウム「在外投票と政治参加」を開催した。同ネットワークは3年前の参院選に際し、自民、民主、公明、共産の主要4党の衆院議員を招いて海外では初の「政党討論会」を開いた。
 シンポのパネリストは、東京から駆けつけた元毎日新聞論説副委員長の石原進氏をはじめ、地元のジャーナリスト、後藤英彦氏、日本語雑誌「ブリッジUSA」編集主幹の加賀﨑雅子氏、カリフォルニア州立大学准教授(国際関係論)の平田恵子氏の4人。平田氏を除く3氏は前回の政党討論会にも司会やパネリストとして参加。コーディネーターは同ネットワーク事務局長の東繁春氏が務めた。
 今回のシンポで最も重要なテーマとして取り上げたのは、海外有権者へのインターネット投票の導入。国内と選挙制度が同じになった2007年7月の参院選、2009年8月の衆院選で海外での投票率が3%にも届かなかったことに危機感を燃やし、様々な角度から検証・検討した結果、カリフォルニア州でわずか2カ所しかないなど在外公館の投票では投票率を伸ばすことに限界があり、インターネットを活用した投票を要望すべきだ、との方針がまとまった。
 シンポを前にインターネット投票などに関するアンケート用紙を10政党に対し送付し、民主、自民、公明、共産の4党と、たちあがれ日本の計5党から回答を得た。その結果がシンポで披露されたが、インターネット投票については自民党が「現在の制度の状況を見ながら決める」と態度を保留したほかは、4党が「今後、導入を検討する可能性や意向がある」と前向きの回答を寄せた。
 シンポでは、今回の参院選に立候補を検討しながら結局断念したハワイ在住の山口登氏のインタビューがビデオで上映された。山口氏は選挙準備のためロサンゼルス、サンフランシスコ、上海にある母校・立教大のOB組織を回ったところ、ほとんどのOBが選挙人登録もしておらず、海外の日本人が政治から疎外されていることを実感したという。
 パネリストも、今後、大きく投票率を上昇させるにはインターネット投票の導入が不可欠との認識で一致。また、ブラジルのサンパウロでは、国内で外国人参政権が政治的な課題として浮上していることに関連している中で、「在外の日本人にこそ地方参政権を」の声が地元マスコミに寄せられていることなども報告された。
 海外有権者ネットワークは、ロサンゼルスをはじめ、東京、ニューヨーク、サンパウロなど計18の組織が誕生しており、インターネット投票の導入に関しては、世界各国にある18のネットワークが連携して政府や各党に働きかける方針だ。
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 先月24日に公示された第22回参議院通常選挙は、今月11日に投開票。ブラジル国内での在外公館投票は3日まで各地の公館(サンパウロ管内は文協ビル)で行われている。