■ひとマチ点描■「おばあちゃん来たよ」

ニッケイ新聞 2010年7月6日付け

 「おばあちゃん来たよって、つい声に出ちゃいました」と微笑むのは、約100年前にグアタパラ耕地で10年間を過ごした小井手伊勢子さんの孫、椎野千砂さん(ちさ、52)=広島市在住=だ。場所は、おばあちゃんが通った小学校があったと思われるところ。耕地の朽ち果てた映画館跡の横だったという。
 母、桂子さん(84、広島)は、伊勢子さんの両親らがブラジルで貯めた資金もあって、小井手家では戦前に家を買うことができ借家があったという。「そのおかげで、戦争で洋裁学校の校舎が倒れて疎開していたが、戦後すぐに再開できた」と振り返る。
 78年目を迎える同校の卒業生は4~5千人を数える。その一人がたまたま、島根県人会の古田川英雄会長の揚子夫人(故)だったという縁で、今回、子と孫が移民の原点の土を踏んだ。「この縁がなければ来ることはなかった」と桂子さん。千砂さんは「ブラジルが一気に身近になりました」と笑った。(深)

写真=千砂さんと桂子さん