世代をつなぐ媒体として=JICAボランティア=堀内さんが帰国=高野会長「来てくれてよかった」

ニッケイ新聞 2010年7月27日付け

 今月5日に行なわれた、JICAボランティアの着任・離任式。その席で、しっかりと日焼けした顔に、充実感をにじませて坐っている堀内伸人さん(37、兵庫)がいた。堀内さんは同式の数日前、2008年7月から始まったJⅠCA日系社会青年ボランティアとしての派遣が終了し、その報告のため、派遣先のイビウーナ文化協会の高野信喜会長らと共に来社した。

 300家族の会員がいる同文化協会には、午前、午後に分かれて3歳から16歳までの52人が通う日本語学校がある。そこが堀内さんの派遣先だった。
 米国の日系社会に触れたことがきっかけで、「ある場所に居座り、じっくりと日系社会を見てみたくて、飛び込みました」と堀内さんは当時を振り返る。
 「ただいま」といって文協に〃帰ってくる〃子供たちを見て、家のような存在になっている文協で今も残る家族愛、人間愛に感動したという。
 だが次第に、子ども、父兄、老人会とそれぞれの世代間の繋がりが少ない事がもったいないと感じるようになった。
 「お年寄りの方は日本から来た私に貴重なことをたくさん話してくれました。それを独り占めしてはいけないと思ったんです。でも、皆さんが孫の世代に対して、日本語での会話に遠慮を感じているように思いました。その壁を取り払い、移民の歴史を下の世代に伝えて欲しかった」。その募る思いを形にすることを始めた。
 生徒と老人会の間で、始めはゲームや折り紙を通じて交流を深め、ついに念願だった「移民学習」を始めるに至った。形式は子どもたちからのインタビューを取った。
 「新しい風が文協を活性化させ、より文協に繋がりが生れた」と話すのは、同文協の秘書を務める櫻井聡さん。「外から来た人だから出来た事。良くないなと思ってはいたが、いまさらなことでそれが普通だった」と続けて話し、2年間の活動に感謝の思いを語る。
 「媒体として世代間の間に立ちたかった。そこで思っていた以上のことができた」という堀内さん。そうして生れた縦の繋がりが顕著に現れたのは、堀内さんの送別会だ。会には老若男女300人が集まったという。
 高野会長は「1つの行事に上から下までこんなにも人が集まることはあまり無い」と当時の心境を驚きの様子で話し、「老人会と子どもたちつながりが生まれ、そこに父兄も付いてきたという事でしょう。文協に結束が生れた」と嬉しさをにじませる。
 最後に「本当に来てくれて良かった」と感謝の言葉を送った。
 最後に堀内さんは同文協への感謝を込め、「学校では子どもたちの成長を見たこと、2年を通じて世代問わず心の深い繋がりができました。それが私の宝物です」と満面の笑みを浮かべた。