【特集 岡山県人会】岡山県人会=ブラジルの土踏んで一世紀=母県から慶祝団迎え=古矢副知事「逆に元気づけられた」=最高齢103歳、森広さんも

ニッケイ新聞 2010年8月28日付け

 ブラジルに来たりて早や一世紀――。1910年、約30の県人家族を乗せた旅順丸到着から100年。ブラジル岡山県文化協会(根岸健三会長)は22日、県人ブラジル移住100周年、県費留学制度創立51周年式典をリベルダーデの愛知県人会館で挙行した。母県から古矢博通副知事、岡﨑豊議会議長らを始めとする14人の慶祝団を迎え、会員、関係者ら約300人が節目の年を祝った。

 大部一秋在サンパウロ総領事夫妻、木多喜八郎文協会長ほか日系団体代表ら多数来賓が訪れた。
 司会は、県費留学生OBらが司会を務め、日伯両国歌斉唱、先没者への黙祷が行われた。
 根岸会長は、県人移住一世紀の歴史を振り返り、「亡き先輩方のご苦労を忘れず、決意を新たにしたい」とあいさつ。
 古矢副知事は「県人会の皆様の温かい歓迎に感謝」と述べ、石井正弘知事の祝辞を代読した。
 両親が同県津山市出身の木多会長も、お祝いの言葉を贈った。
 県から県人会へ備前焼の花瓶、雛人形などが贈られ、日系3団体への寄付を贈呈。功労者8人、高齢者61人、模範会員らが表彰を受けた。
 高齢者表彰では古矢副知事がそれぞれの席で、一人ひとりに表彰状と記念品を手渡し、受け取った賞状を手に涙を浮かべる人もいた。
 最高齢の森広登さん(103、岡山市)は、「ブラジルの温かい国民性、気候に恵まれ、100歳を3回突破できた」と矍鑠(かくしゃく)と謝辞、来場者からは拍手が送られた。
 県民愛唱歌「みんなのこころに」の合唱後、祝賀会に移り、カラオケ、カポエラ、サンバショーが繰り広げられ、会場は笑顔に包まれていた。
 古矢副知事は「激励のつもりが逆に元気づけられた。いつまでも思い続けてもらえるような母県でいたいと思う。しっかりせんといかん」と表情を引き締めていた。

他県に先駆けた留学制度

 1959年、子弟教育を優先事業として県政に辣腕をふるった三木行治知事は、海外県系子弟を母県で学ばせる県費留学制度を他都道府県に先駆け開始した。
 県民生活部国際課の藤本悌弘課長によれば、留学制度は2003年度に終了したが、79年に始まった海外技術研修制度は現在も続き、28カ国、324人(ブラジル人132人)が母県で研修を受けているという。
 県費留学生・技術研修生OBを代表して、式典で挨拶した根岸会長の長男吉郎さんは、「現在の仕事が出来るのも研修のおかげ。後輩のためにもぜひ続けて欲しい」と事業の存続を願った。
 第1回県費研修生として岡山市で建築を学んだ栢野定雄さんは、「当時は戦争の傷跡が残っていたが、多くのことを学んだ。母県に感謝したい」と話していた。

ごあいさつ=岡山県副知事=古矢 博通

 岡山県人ブラジル移住100周年に当たり、岡山県民を代表してお祝い申し上げますとともに、記念式典が盛大に執り行われますことを心からお喜び申し上げます。
 1910年、岡山県からの最初の移住者の方々が旅順丸でブラジルの大地に渡られて以来、100周年の記念すべき年を迎え、ブラジル岡山県文化協会の皆様や御来賓の方々共々祝うことができますことは、岡山県民にとりましてこの上ない喜びです。
 ブラジルは南米の雄として、また成長著しいBRICsの一員として国際社会の中でゆるぎない地位を確立し、2014年のFIFAワールドカップ、2016年の南米初のオリンピック開催が決定し、世界の注目を集めています。
 こうした発展は、岡山県をはじめとした日系の方々の長きにわたるたゆまぬ努力と社会への貢献があったからこそであり、日本人として誇りに思うと同時に、重ねて深甚なる敬意を表したいと存じます。
 皆様の郷土岡山県では整備の進んだ高速道路や岡山空港、水島港などの充実した交通基盤を基礎に、個性と魅力あふれる元気な岡山の現実に向けて、県民と一丸となって「暮らしやすさ日本一」を目指した取組を進めています。
 また、県内には約1500人の日系ブラジル人の方々が在住されていますが、言葉のサポートや生活面の支援を行い、これらの方々が安心して暮らし、いきいきと活躍していただける社会づくりに積極的に取り組んでいるところです。
 これまでブラジルから132人の御子弟を海外技術研修員としてお迎えしておりますが、帰国後、社会の各方面で御活躍されるこうした方々にも御支援をいただきながら、岡山県とブラジルの友好交流が一層拡大するよう努めてまいりたいと考えております。
 結びに、残念ながら移住百周年を待たずに亡くなられた先人のご遺徳を偲び、栄誉を讃えますとともに、本日お集まりの皆様をはじめ、岡山県出身者と御子弟お一人お一人の御健康とご繁栄、並びに、日系社会の一層のご発展を祈念いたしまして御挨拶といたします。
(石井正弘知事の祝辞を代読)

ごあいさつ=岡山県文化協会会長=根岸 健三

 本日ここに岡山県人ブラジル移住100周年並びに県費留学制度51周年記念式典を挙行するに当たり、ブラジル岡山県文化協会を代表して、一言お礼並びにごあいさつ申し上げます。
 この度、私たちの母県、岡山県より副知事、古矢博通様並び、県会議長岡﨑豊様を初め、多くの慶祝団の皆様を迎え、各界名士の方々のご列席を賜り、ここにブラジル岡山県人移住100年の式典を挙行できました事を役員一同、誠にありがたくこの上ない喜びを感じております。
 この式典を行うために多くの方々から多大の御支援、御協力をいただきました事に厚くお礼申し上げます。
 さて、今を去る100年前、私たち岡山県人の先駆者たちは青雲の志をいだいて、第2回の移民船である旅順丸に乗船し、1910年6月28日、サントスに力強く上陸されました。これが岡山県人がブラジルに足を踏み入れた最初でした。
 勇敢にも未知の国ブラジルへ移り住み筆舌に尽くし難い苦難を乗り越えて子孫、安住の礎を築いて下さった事により、今日の私たち二世、三世の繁栄を生み出す元となった事を思う時、敬意と感謝の気持で一杯です。
 私たちは今日の式典を縁として亡き先輩の御苦労と御遺徳を偲び、その御遺志をしっかりと受け継いで行かなければならないと決意を新たにする次第です。
 また、私たちの県人会は1953年にブラジル岡山県文化協会として発足、会員相互の親睦と母県の交流を深めるために努力してきました。
 中でも特筆されるのは、ブラジルの他都道府県人会に先んじて岡山県が59年に県費による留学生制度を設けたことにより、他県もこれに習い留学生制度が生まれました。その事を私たちは誇りに感じています。
 留学生、研修生制度は年々予算の獲得が難しくなり、減少傾向にありますが、明日を担うブラジル日系人を育てる意味からも、この事業を是非、継続していただく事を切望いたしております。
 また毎年、母県の方から私たちブラジル岡山県文化協会のために、多大のお気配りをいただき、この場を借りまして厚くお礼申し上げます。

ごあいさつ=岡山県議会議長=岡﨑 豊

 岡山県人ブラジル移住100周年記念式典が盛大に開催されるにあたり、岡山県議会を代表して一言お祝いを申し上げます。
 1910年岡山県からブラジルへの移住が始まって今年で100年になりますが、艱難辛苦を克服され、現在の日系人社会の繁栄とブラジル発展の礎を築かれた先人の方々に対し、衷心より敬意を表します。
 ブラジルと岡山の友好親善は1959年に創設された県費留学制度や日本へお迎えする海外技術研修員をはじめとして、様々な分野で脈々と続いていますが、この橋渡し役として、ブラジル岡山県文化協会が果たしてこられた役割に対し、改めて感謝を申し上げます。
 岡山県議会としても、知事と共に従前にもまして各種交流に努めて参る所存であり、ご臨席の皆様におかれましても、一層のご協力をお願いする所存です。
 ブラジル在住岡山県出身者の方々のご健康と日系人社会、そしてブラジルの今後の益々のご発展をお祈りしてお祝いの言葉とさせて頂きます。