コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年9月29日付け

 不思議なもので左派の労働者党(PT)には歴史的に日系議員は少ないが、現政権は地デジTV日伯方式を採用し、移民百周年を盛大に祝うなど日本とその移民に手厚い印象がある。この日曜日の投票で誰が当選するかで次の4年間が決まる▼04年の小泉首相来伯、05年のルーラ大統領訪日から両国の歯車はかみ合い始めた。06年に地デジ日伯方式決定、07年に放送開始、08年にペトロブラスの南西石油買収などが発表され、日本をパートナーとする明確な意思表示がされた▼ジウマ・ロウセフ官房長官(当時)は08年4月に大統領代理として訪日し、日本移民百周年東京式典に出席した。その時に「今後は鉄道、宇宙開発、原子力における技術移転のような新しい分野でも両国の関係を発展させる必要があります」と表明し、ハイテクによる関係緊密化への期待を明らかにした。ブラジルによる地デジ方式の南米諸国普及は、まさにその通りになった▼東京式典時に、リオ―サンパウロ市と同じ距離の東京―京都間の新幹線の快適な乗り心地を彼女は体験している。伯字紙は「日本政府は大統領並みの特別待遇をした」と皮肉ったが、今の選挙状勢が維持されれば実際に大統領に選ばれる可能性が高い▼同年4月25日付けフォーリャ紙によれば式典後のパーティで、皇后陛下は「英語はできますか」とジウマ氏に語りかけ、通訳を退けて直接に「もう何日かあれば日本の他の場所も訪ねたいですか」などと会話された。もちろん選挙は最後まで分からないが、もしブラジル初の女性大統領が生まれた時には(できれば新幹線方式の調印式をかねて)ぜひ再訪日してしいものだ。(深)