曹洞宗仏心寺=僧侶同士が本堂でケンカ=「やるか!」と木魚を手に=禅の議論がエスカレート?=すでにクビで両成敗

ニッケイ新聞 2010年10月2日付け

 座禅会などを開き、精神修養を説く禅宗の寺院、曹洞宗南米別院仏心寺(采川道昭総監)で9月14日、日本から来た30代の僧侶が70代の現地僧侶に対し、殴る蹴る首を絞めるといった暴行を働いていたことがニッケイ新聞の取材で分かった。被害を受けた西村勇心さんは「はっきり言ってリンチ」と話す。病院に通い警察にも被害届けを提出済みだという。同寺理事会(玉田伯夫理事長)は緊急会議を30日に開き、事情を聞いたうえで2人を解職している。

 仏心寺といえば、07年4月にブラジル人僧侶が座禅会の参加者を裏庭に呼び出して暴力をふるったことが伯字紙に取り上げられている。
 今回は何と僧侶同士が当事者で、現場となったのは、本堂の仏前だったというのだから――。
 今回被害を受けた西村氏は得度後、4年前から仏心寺で勤務。
 熊谷源宗氏は昨年あった創立50周年時に同寺で研修、日本での修行後、約3カ月前に再度来伯した。「個人的に佛心寺と契約を結んでおり、本山からの派遣ではない」(寺関係者)。
 当日、本堂の片付けなどの作業をしながら、禅について会話をしていたところ〃意見の相違〃から口論となり、次第にエスカレートしたという。西村氏の状況説明を聞こう。
 「(口論の後)本堂を出ようとしたら『西村、ばかやろう!』と怒鳴られたんですよ。それで私も『今の言葉なんや!』と畳の上に戻った。そしたら『やるか!』と言って向こうが木魚を手にしたんですよ。あれで殴られたら痛いですからね。手を離した隙に次は私が木魚を取ってね。そしたらつかみかかってきた。殴ったり蹴ったりされて首も絞められた。私は手を出さなかったですよ。それからしばらくの間、体中が痛み、頭もボヤーとして、歩くにも難儀するほどだった」
 仏の面前のみならず仏具を武器に…。本当ならば由々しき問題だ。
 加害者とされる熊谷氏に連絡すると「寺の許可なしでは一切話せない」の一点張りながら「一言言わせてもらうならば、あの人は嘘つき。自分の都合のいいように解釈しています」としながらも暴行の事実は否定しなかった。
 双方から事情聴取した理事会は30日の会議で解職を決定。寺の関係者は「双方の主張で食い違う点はあるが、喧嘩両成敗ということで2人とも辞めてもらいました。どんな理由であれ、僧侶の立場で暴力をふるうのはあってはならないこと」と話している。
 「寺の女性から『揉んでもらったのね』という言い方をされた。日本の習慣ではそうなのかも知れないが、情けなくなってくる」と話す西村氏は怒りが収まらないようで、日本の本山に手紙を書く積もりだという。
 「熊谷氏が短気だとか、西村氏が煙たがられていたことはない。単純に議論が昂じ、感情的になっただけだと認識しています」(寺関係者)
 事件化し警察が介入しても、すでに辞めた2人の個人的な問題。組織としては常識的かも知れないが、あまりに〃修行不足〃の2人を放り出すとはー。何とも無慈悲な処置ともいえそうだ。