中華民国建国99周年祝う=東洋街の客家センターで=「来年は日系も一緒に」=日本移民は家族のよう

ニッケイ新聞 2010年10月7日付け

 「来年は日系も一緒になって盛大に祝いましょう」。5日夜、リベルダーデ区サンジョアキン街にある客家センター2階の聖保羅(サンパウロ)華僑文教服務センターの講堂で中華民国(台湾)99年國慶酒会(建国記念日祝賀会)が行われ、木多喜八郎文協会長と松尾治百周年執行委員長は共に喜び、そう語った。当日は200人以上が訪れ、政治的迫害などの苦難の道を乗り越えて移住してコロニアを築いてきた中、祖国が大きな節目を迎える来年への期待を口々に語りあっていた。

 中国と歴史的に複雑な関係を持つことからブラジル政府は正式な外交関係を中華民国と結んでおらず、〃総領事〃にあたるのは駐聖保羅(駐サンパウロ)台北経済文化事務所の所長で、陳宗賢(チェン・ツン・シェン)氏が任じている。
 陳所長は開会の挨拶で、「みなさんと協力しあいながら、国際社会での地位を高め、確立しなければならない。ブラジルは台湾移民を温かく受け入れてくれた。ここでの絆を強め、イーリャ・デ・フォルモーザ(台湾)の名を広めていきたい」と語った。
 同コロニア有数の成功者として知られる、儀典指導を行うイブラデッチ社のマウロ・ウー社長は「台湾は本来地名であり、国名はあくまで中華民国」と強調し、父がレシフェに到着した広東出身の初期移民11家族の一人であることを誇りに思うとのべ、「VIVA CHINA!」と締め括った。
 最後に、コロニア団体を代表して聖保羅中華会館のクアン・ピン・ルー会長も壇上に立ち、「ここに居あわせた幸せに感謝します」と語り、陳氏の音頭で乾杯し、来賓らと共にケーキ・カットをし、祖国の発展を紹介するビデオを鑑賞、中華料理に舌鼓をうった。
 台湾コロニアが勢力を結集して05年に建設したこの客家センター。地下駐車場から地階、1階が客家センター、2~3階が政府系の華僑文教服務センター、4~5階が台湾仏教会によって運営されている。
 〃領事〃役を任じる、華僑文教服務センターの柯慶榮主任(コ・チン・ロン)によれば、ブラジル移住開始は50年ほど前で、台湾系コロニア人口は約8万人で、70団体あり、政府が教科書を無償提供している学校が40校あるという。「簡略化していない昔ながらの漢字を学校で教え、中国文化継承を目指しています」と熱っぽく説明した。
 63年頃渡伯した、巴西(ブラジル)台湾移民連誼会の陳文財会長は「蒋介石の迫害から逃れて多くの同胞が60年代以降にブラジルへ渡った」と振り返る。当時は反体制派とみられると容赦ない弾圧が加えられた。拉致、行方不明、殺害などから逃れて多くが海外へ移住した。
 陳会長は「僕らのように日本語教育を受けた世代は英語がよくわからない。ブラジルに行けば大きな日系コロニアがあって言葉も通じると思ってやってきた。家族のようなもの。だから、来てすぐに南米銀行と取引をはじめた」と続ける。
 その当時、南銀ガルボン支店長として陳会長と知り合った松尾治百周年執行委員長は、「来年はぜひ日系コロニアも一緒になって百周年を祝えたらいい」と喜ぶ。当日は祖国のテレビ局「台湾宏観電視」の特派員・廖世秉氏も「来年は当地でももっと盛大に祝いますよ、きっと」と興奮気味に語り、ビデオカメラを片手に会場を飛び回っていた。