コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年10月7日付け

 ゲートボールというとポカポカ陽気で和やかにーといったイメージがあるが、老いらくの恋のせめぎ合う場でもあるらしい。いつだったか一人の女性(お富さんとしておく)を巡り、スティックで殴り合いがあったと聞いた。何でも武器になるものだなあ、と変に感 心したものだが、今度は木魚なのだから「お釈迦さまでも知らぬ仏」だ。曹洞宗仏心寺の本堂で繰り広げられた僧侶2人の取っ組み合い事件(2日付け詳報)である▼「あんなに大きく書いて…あなた、お金をもらったんですか」と寺関係者に詰問された。お金をもらっているのなら、カラー特集号でも組んでいる。大きく書いたのはニュースであり、警察に被害届けも出ている事件だからだ。続けて「一方的に書いている」とも▼これには大いに反論を加えたい。暴行を振るったとされる若い僧侶は「総監の許可がないと話せない」という。寺に連絡すると「総監はいるが、忙しいので4日間は話せない」と職員の男性。他の僧侶曰く「総監はあくまで住職。寺の責任は理事会にある」とほぼ取材拒否▼禅の議論が発展してケンカになったというから訳が分からない。修行不足は否めないが、聞き捨てならないのは、この被害者は知人の男性に「(暴行は)上から示唆されたようだ」と漏らしていることだ。それなら角界を騒がせた時津風部屋の親方「かわいがってやれ」同様だろうが、真相はあくまで闇の中▼一両の損もすることなく、「双方クビ」とケンカ両成敗を決めたお見事な理事会裁き。芥川龍之介「蜘蛛の糸」のカンダタの結末を思い出したが、その前に慈悲の糸は垂らされたのか。(剛)