広島・長崎の医師団来伯=在伯被爆者を巡回検診=サンパウロ市、ベレンなど4都市で=現地治療を訴える声強く

ニッケイ新聞 2010年10月20日付け

 広島、長崎県が国の補助を受け、1985年から隔年で実施する「在外被爆者健康診断」のため、両市の医師ら9人で組織する在南米被爆者健康相談等事業派遣団(松村誠団長=広島県医師会常任理事)がベレン(14日)、サンパウロ(18、19日)、クリチーバ(20日)、リオ(21日)4都市で約90人の被爆者に検診を行っている。今回15回目。ブラジル被爆者平和協会の森田隆会長は、今回の来伯を喜びながらも「我々が長年求めている現地治療がまだ認められない」と怒りを隠さない。24日に訪日し、厚生労働省に現地の声を伝える予定だ。

 1974年の旧厚生省公衆衛生局長名による日本出国者は手当を受け取れない(402号通達)など、在外被爆者への保障はないに等しかった。
 現在、医療助成の面では、在外被爆者は年間17万円程度の上限付きだが受けられる(日本国内の被爆者は無料)。
 訪日しなければできなかった原爆症認定申請が、今年4月から在外公館などでも手続きできるようになるなど、法改正を経て是正されつつあるのだがー。
 サンパウロの援協福祉センターで18日に行われた検診では、約20人の被爆者が訪れた。
 医師らの診断後、「一般の人間ドックで受けられる検査」(松村医師)を受けることができる。
 森田会長は、「もう時間がない。援協など立派な病院があるのだから、日本の被爆者同様、一日も早い現地治療ができる環境を作ってほしい」と話す。高齢化が進む被爆者が日本に帰国して治療を受けるのは、体力的にも経済的にも困難だからだ。
 2度目の来伯となる松村医師も森田会長の言葉にうなづき、検診に関しても「2年に1度では不十分。日本国内の被爆者同様、毎年の検診をすべき」と話す。
 広島市内で5歳のとき被爆した政田健治さん(70)は、数カ月前に肺がんが発見された。「あと1年の命」と診断され、癌治療を始めるところだという。
 当時、大村海軍航空隊に属していた芦原学さん(82)は被爆直後の長崎市内に救援活動に入り、入市被爆した。
 「日本に行くのは大変。ここで治療が受けられたらいいけれど、ブラジルにいるからしょうがないのかも」と肩を落とした。