仏心寺暴行事件=寺を告訴へ、謝罪も要求=怒り収まらぬ西村勇心氏=いじめ嫌がらせ過去にも=鈴木理事「謝罪する気ない」

ニッケイ新聞 2010年10月30日付け

 【既報関連】先月14日、曹洞宗仏心寺(采川道昭総監)の本堂で起こった僧侶同士の暴行事件で、被害者側の西村勇心氏(74)が寺に対し、就労期間中の手当てが払われていないとして約1万レアル(50万円)の支払いと、暴行事件の謝罪と賠償を求める訴訟に踏み切ることが本紙の取材で分かった。「全てを弁護士に任せています」と西村氏。鈴木幸子総務理事が「仏具を壊し、僧侶らしからぬ言動が多かった。やられて当然。こちらも弁護士を立てる」と徹底抗戦の構えを見せる一方、采川総監は、取材を申し込むと、「…忙しいので」と電話を切った。

 西村氏と30代の熊谷源宗氏が9月14日にこともあろうか寺の本堂で暴行事件を起こしたことで、同月30日に開かれた緊急理事会(玉田伯夫理事長)で二人の解雇が決まった。暴行したとされる僧侶はすでに帰国している。 
 慈悲の心はないながら組織としては当然の対応とも言えるが、西村氏の話を聞くと、内部の複雑な事情が浮かび上がってくる。
 「理事会には采川総監を含め6人(うち3人女性)が出席していました。私の解雇は一人の男性を除く、全員が賛成。采川総監が引導を渡した。『お前の言動、態度は悪い。辞めろ』と。喧嘩両成敗なら、熊谷も辞めさせるべきじゃないかと言ったんですよ。そしたら変な顔してね。部屋を出る私に聞こえるように解雇を言い渡してましたよ」
 確かに暴行された側を先に解雇するのはおかしな話。「窓際族だった」と自嘲する西村氏は、「女性らに嫌われてましたしね。色々嫌がらせもあった。今回の事件は寺にとって、私を辞めさせるのに好都合だった」。
 理事会を代表して反論する鈴木総務理事によれば、西村氏が仏具(鉦)を壊したことが喧嘩の発端だという。
 「お釈迦様の体を怪我させたようなもの。乱暴な言動は、いつものこと。その積み重ねが解雇に繋がった」と語気を強める。
 「今までにも気に入らない僧侶に一部役員が嫌がらせをし、結果、数人が寺を去った」と西村氏は指摘、「以前も非日系の僧侶が昇給を求めたことが気に喰わなかったんでしょう。金銭問題の細かいミスを咎め、『給料は200レ。嫌なら辞めろ』とかね」
 鈴木総務理事は、「細かいことは知りませんが、いじめや嫌がらせは人間なんですから、どこの世界にもあることじゃないですか」と否定はしなかった。
 「暴行事件後に事情の説明を書かされたんですが、『寺に求めること』の一項もあった。私は何も書かなかったわけですが、これ幸いと思ったんでしょう」(西村氏)。寺からは一切の謝罪はないという。
 弁護士には、病院の診断書や警察への被害届けなど関連書類を全て渡しており、訴訟に入るのも時間の問題のようだ。
 「裁判にするというなら、こちらも弁護士を立てて争う。謝罪をする積もりはない」(鈴木総務理事)
 西村氏は寺に望むこととして、「内部をガラス張りにして、物事をうやむやにせず、はっきりさせるべき」とし、「役員の気に入らなかったら、嫌がらせされて追い出されるような状況はおかしい」と内情をぶちまけている。