コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年11月9日付け

 「お茶の会」の力は凄い。正式には裏や表千家の茶の湯の事であり、客を招き作法にのっとって茶を供する集まりなのだが、庶民派にとっては井戸端会議をちょっとばかり上品にして茶を飲みながら軽口噺に興ずるたわいもない集いなのである。ところが―この噂話や戯言は、口から口に伝わり瞬く間に世に広がる。米国では「ティーパーティ」を言うらしいが、あの中間選挙の勝敗も、この茶会が決したらしい▼オバマ大統領の信任投票となった中間選挙の予想は、かなり早くから民主党敗北の見通しがあったけれども、これが見事なばかりにぴたりと的中したのには、今更ながら仰天する。しかも、下院で60議席超をも失う完敗であり、国民は「大きな政府に反対」の意向をはっきりと示し、勝利した共和党幹部は「オバマ氏を1期限りの大統領にすることだ」とまで言い切った。と、真に厳しいが、これからのオバマ政権の行く先は間違いなく苦しくなる▼初の女性議長となり話題になったペロシ氏は去り、逆に名を高くしたのが前アラスカ州知事のペイリン氏である。2年前の大統領選挙で共和党の副大統領候補として健闘した女性だが、彼女は「お茶の会」でも活躍し新聞などのマスコミもよく取り上げて報道したし、次の大統領候補になる可能性も極めて高い。それほどに「茶会」の威力は強く、ご婦人らの意気込みは強い▼オバマ氏の敗北は、巨額な財政赤字と景気の悪さなどが原因とされるが、最も身近なのは失業率が10%近くをうろうろし不況感が市民らを痛めつけ、暮らしに困窮する現実の姿が「民主反対」になったのを忘れまい。(遯)