セラードの経験をアフリカに=モザンビーク=日伯共同で大型農業協力=最貧国から穀物輸出国へ農牧公社とJICA参画

ニッケイ新聞 2010年11月11日付け

 日本政府と日系産組が協力して不毛の乾燥地帯を農地に改良し、ブラジルを世界第2位の大豆輸出国にしたセラード開発の経験がアフリカ大陸に移植される――韓国でのG20に参加する直前、現役最後のアフリカ大陸訪問としてモザンビークに立ち寄ったルーラ大統領は9日、首都マプトで伯日共同の大型計画「プロサバンナ」に関する三国間提携式を行った。日本からは国際協力機構(JICA)、ブラジルからはブラジル農牧研究公社(Embrapa)が計1340万ドルの投資をする同大陸では最大規模の農地開発構想だ。

 1973年の世界穀物大不作を契機に、時の田中角栄首相の呼びかけでブラジル中央部の不毛地帯を大豆産地にするセラード開発計画(プロデセール事業)が79年に開始され、日本政府の音頭の下、コチア産組、南伯産組などを巻き込んで多くの日系農業者が入植した。大きな投資が行われ、大規模な土壌改良と灌漑施設の敷設によって、農業不適地を世界有数の一大穀倉地帯に変え、ブラジルを世界第2位の大豆生産国にした。
 このセラードの経験を、気候が似ていて飢餓に悩むアフリカ大陸に適用し、新しい農業フロンティアにする計画だ。伯農牧公社は日本側の協力でセラード開発から得たノウハウを、同じポ語圏である現地のモザンビーク農業投資研究所(IIAM)に伝える。同農牧公社サイトの広報によれば「サバンナはセラードに大変気候が似ている。環境を考慮した持続的農業ができ、市場の需要に応えるものになる」と期待している。
 モザンビークは17年間も続いた激しい内戦で国土は荒廃し、92年に終結した時には世界最貧国といわれた。その後、ようやく発展の軌道に乗りはじめたが、北部地域発展の鍵は今回の計画の対象地域であるナカラ回廊周辺の農業開発だといわれている。
 予定では今後63カ月間(約5年間)で日本側はJICAが730万ドル、ブラジル側は外務省とブラジル協力事業団(ABC)による360万ドルを含めた計1340万ドルが投資される。
 JICAブラジルの芳賀克彦所長は「昨年4月から1年半かけて準備してきました。モザンビークの隣国も含めた食糧安保に日伯で協力していくものです」と説明する。
 さらに「とにかく広大な面積ですから、まずは共同研究で土壌特性を解析し、どんな作物が適しているかなどを調べる。最終的には日伯の民間企業に呼びかけて投資をしてもらい、自国の食糧自給はもちろん近隣の食糧不足国にも輸出できるようになることを目指しています」とのべた。