ブラジル銀が日本人顧客獲得へ=長野県=レアル建て預金をアピール=危機後の送金減も背景に

ニッケイ新聞 2010年11月13日付け

 【信濃毎日新聞】長野県上田市に県内唯一の拠点、長野出張所を置くブラジル銀行が日本人客からの預金獲得に力を入れている。2014年にサッカーワールドカップ(W杯)、16年に夏季五輪を控え開発熱が高まるブラジル。急激な円高で外貨預金が注目される中、外貨獲得に向け高金利の定期預金をPRする。08年のリーマン・ショック後に大勢の在日ブラジル人が帰国し、同行経由の本国送金が減ったことも背景にある。

 「日本の銀行は金利が低過ぎる」。上田市の50代の公務員男性は9月中旬、長野出張所に預金口座を開設。「生活に大きく影響しない範囲」と、試しに2年定期で1万レアル(約50万円)を預けた。
 同行は今年2月以降、同出張所を含む国内7支店・出張所で順次、レアル建て定期預金の取り扱いを始めた。日本の金融機関では円定期の年利は0・1%以下が多いのに対し、同行のレアル建て定期の年利(税引き前)は額や期間により3・0~8・0%だ。
 預入時よりも円安になれば利益が出るが、円高になれば元本割れする可能性も。また、金融機関の破綻時に一定額の払い戻しを保証する日本のペイオフ制度は適用されない。
 「現在の(極端な)円高はこのまま続かないという見方もある。成長が続くブラジルへの外貨預金は有望だ」と、同行のジョルジ・アウタイール・ピント・ストゥルメール・アジア地域統括マネジャー。日本人による新規の個人口座開設は現在、7支店・出張所の合計で月に200~300件あると説明する。
 長野出張所も、上田駅前などで日本語のパンフレットを配ってPR。今月初めには上田商工会議所に入会申請し、地域で存在感を高めようとしている。現在、日本人による口座の新規開設は1日に数件程度という。
 同行の日本進出は1972(昭和47)年。在日ブラジル人の増加とともに労働者による本国への送金を担ってきたが、リーマンショック後の送金額はピーク時より約2割減少した。上田市在住のブラジル人も今年9月末現在で1262人と、ピークの06年3月末に比べ約6割減っている。
 群馬支店(群馬県太田市)のイワザキ・マリオ支店長は「今後も顧客の中心はブラジル人だが、時代の流れで少しずつブラジル銀行の役割が変わりつつあることは間違いない」と話している。