おじいちゃんの故郷を知りたい=初のコチア青年3世訪日=一家3世代での参加も=「無事に終え、2回目も」

ニッケイ新聞 2010年12月18日付け

 「おじいちゃんの生まれた場所、住んだ町、遊んだところがどんなのか知りたくて」。13歳の少女が祖父の故郷に思いをはせる―。1次1回のコチア青年着伯から55周年を記念して、コチア青年連絡協議会(新留静会長)は初の青年子弟三世研修訪日事業を実施する。訪日団は今月27日から来年1月17日までの日程で日本に滞在。三世が主体の研修だが、中には親子3世代で参加する「面白い組み合わせ」(関係者)も。自分の故郷、少年時代のことを孫に伝えたい一世、日本語を上手く解さない孫との通訳は二世の親が務める。祖父が生まれた地で新年、正月を過ごすこの研修で、10代前半が中心の若い三世団員らは何を思うのか。出発を前に新留会長らとともに来社し、訪日への思いを語った。

 同協議会では1979年から二世を主体とした訪日研修事業を実施。96年までに9回、計640人ほどを派遣した。今回は、団長らを合わせ、三世が18人、二世が5人、一世が8人の計31人の訪日団になる。
 「長野で生まれたおじいちゃんの事が知りたくて」
 団員の前田ルリアンさん(13)に研修に応募した動機を聞くと、そう答える。
 前田さんは二世研修で日本を訪れた母の薦めもあり、今回一人で参加。「おじいちゃんが生まれた所がどんな町であったかを自分の目で見たい。よく遊んだ場所なんかを訪れるのが楽しみ」と胸を膨らませる。
 21日間の研修では日本到着後、団員はまず祖父の出生地、ゆかりの場所を訪問。大晦日、正月をその親族らの家で迎える。
 その後は広島から兵庫、大阪、京都、東京の各地を観光。神戸では移民資料館なども訪れ、日程中には要人訪問なども行われる。日本への理解を深めるため、団員にはポ語で書かれた各名所の資料なども配られる。
 同団の杓田美代子副団長は、子と孫で故郷の三重県を訪れる。娘の白浜セレステさん(41)は、「日本はこんなチャンスがなければ行けないところ。日本人の血を持っているのだから、子らには正月の過ごし方から、歴史、異なった習慣などを見せてやりたい」と話す。
 白浜さんの息子ガブリエル君(14)は、「初めての日本、全部楽しみ」。祖父と北海道を訪れる石川マウリシオさん(15)は「日本を知りたい」と思いはそれぞれだ。
 団長を務める羽鳥慎一さん(協議会副会長)は初の三世訪日事業にあたり、「無事に終わることが第一。そして今回が成功であったら第2回目も実施したい。だから、とにかく成功させたい」と力強く話す。自身も孫を連れて行くそうだ。「三世の世代が日本社会に触れて、社会的な成長も願いたい」と出発せまる心境を述べた。