日本の交番、普及に一役=各州に治安改善の切り札=リオ総領事館の石井領事

ニッケイ新聞 2010年12月22日付け

 4年後にサッカー・ワールドカップ(W杯)、2016年には南米初の夏季五輪を開催するリオデジャネイロ。2大イベントを控え、リオ州などが治安改善の切り札にと着目するのが日本の交番制度だ。
 住民と警察が一体となって地域の諸問題の解決策を練りながら犯罪を予防する交番は徐々に効果を発揮、全国12州が制度導入を決め、在リオ総領事館の石井靖昭領事(49)もボランティアで普及に一役買っている。
 「地域で何が起きているかを把握できれば、犯罪発生に至る過程も分かり予防もできる。そのためには住民と警察の協力が不可欠だ」
 千葉県警出身の石井領事は県警本部地域課で約7年半、交番を要とする地域警察の仕組みを企画した「交番のプロ」。01年には国際協力機構(JICA)の専門家として、国連暫定統治後、初の自主選挙を終えて自立の道を歩み始めたカンボジアでも研修に当たった経験の持ち主だ。
 JICAは08年以降、日本の現職警官を短期専門家としてブラジルに派遣しているが、期間は1カ月単位、しかも年2回程度と人員も不足気味。08年、マット・グロッソ州での国際地域警察セミナーで石井領事が交番制度を紹介したのをブラジル法務省が見逃さず、講師役を打診してきた。 これまでにベレンやポルト・アレグレなど計6カ所で警官や住民代表ら千人以上にノウハウを直伝してきた石井領事は、「自分の趣味としてやっている。通訳抜きで、ポルトガル語で直接説明できたらもっと良いのに」と話す。
 05年にサンパウロ州が日本の協力で交番制度を最初に投入し、09年時点で同州の殺人事件発生件数は人口10万人あたり10・95件と、1999年と比べ69%も激減したとの統計もある。
 JICAの支援が終わる2011年11月以降、ブラジルは自国が交番伝授の本家となって、中南米やアフリカへの制度輸出拠点化を目指す。
 石井領事は「どの国でも犯罪の大小はあっても根っ子は同じ。交番制度は住民と接する警官の心がけと、制度を継続することが大事。日本の交番は130年以上の歴史があってもまだ完全とは言えない」と話した。(リオデジャネイロ共同=名波正晴)