コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年12月22日付け

 海外最大規模といわれる日本祭を開催してブラジル社会での存在感を強めている県連、日伯友好病院の成功を背景にして福祉センターという本部ビル建設を果たした援協に比べ、先日55周年を迎えた文協が〃御三家〃の中で最も新時代の特長を出し損ねている印象を受けるのは、コラム子だけだろうか▼執行部が二世陣に入れ替わってからはや十年近いがビル改修すらままならない。〃負の遺産〃たるINSS問題などが尾を引いているのだろうが、コロニア一家の長男たる文協が、すっかり次男、三男にお株を奪われているようだ。現執行部が懸命に働いていることは充分に意識しているつもりだが、一番注目を浴びる活動が会長選挙では少々心もとない▼県連も援協も、自分の持っている強みをさらに伸ばす形で現在の発展につながっている。文協にとっての強みは何かを見極め、それを軸にしてコロニア内の求心力の回復、ブラジル社会への日本文化普及を図る方向性が原点ではないか▼文協大講堂で行われている「民族舞踊祭」を、一般人が見やすい場所に移す形で「コミュニティ祭」にすれば、文協版「日本祭」に育っていかないだろうか。各国系代表に集まってもらい、各コムニダーデの将来を語り合うシンポジウムを開催してもいいだろう▼「行き詰まったら原点に戻る」とは昔から言われること。まずは執行部が発想の足元を固めるためにも、文協の歴史をポ語にしたらと元会長に言うと、実は『文協40年史』のポ語翻訳原稿がすでにあるという。あと人名などの読み方を確認修正すれば出版できるが、そこで止まっているとか。もったいない話だ。(深)