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トメアスー=旧南拓試験場を自然公園に=宮脇昭氏迎え植樹祭=着実に広がる森林農法

ニッケイ新聞 2011年3月11日付け

 【パラー州ベレン発】木を植えようと叫び続けている宮脇昭氏(横浜国立大学名誉教授、83、岡山県)は、今年も『アマゾン熱帯林植樹の旅』のツアー一行7人と共にパラー州を訪れた。2日午後6時からベレン市ヒルトンホテルで宮脇式植樹法について講演会を開催。3日には第20回宮脇式東部アマゾン森林生態系回復の植樹祭をベネヴィデス市にある「命の言葉中学校=管理棟敷地内」で行った。終了後、一行はトメアスーに向け移動。4日午前9時からトメアスー市役所所有のアサヒザール自然公園予定地に、同市役所主催『宮脇方式植樹祭20周年記念』を祝って第21回宮脇式植樹祭を盛大に行った。

 宮脇氏は、「狭い場所でいいんです。幅1メートルの土地があったら植えなさい。3本植えれば森に、5本植えれば森林です」と、試行錯誤を繰り返しながら『トメアスー森林農法』に取り組んでいる若い指導者達を激励しながら伝授していた。
 今回のトメアスーでの植樹祭は、森林農法を指導しているトメアスー組合の小長野道則理事とアマゾン森林友の協会(ASFLORA、佐藤卓志会長)の尽力で市長を動かし、市有地(元南米拓殖株式会社アサヒザール農事試験場跡=戦時中没収された場所)に決定したもの。
 なお、3日のベネヴィデス植樹祭には同中学校生徒約350人が参加し、55種類7600本を植樹。トメアスーの植樹祭には約500人が参加して46種5000本を植えた。宮脇氏は、当地には特にアカプー、バクリ、モギノを推奨しますと述べていた。
 ベネヴィデス近辺では、森林友の協会による植樹祭が頻繁に開催されているので、児童も植樹については熟知しているが、トメアスーでは初めての試み。児童のみならず一般参加者も戸惑っていたが、文協や組合の役員及び父兄、ASFLORAのメンバーがきめ細かにサポートして無事植樹祭を終了した。
 「日系人を主体にしていた(トメアスーの森林農法)が小長野氏の指導でブラジル人に広がり、今回は市と子供を交えての村興し運動に発展した。将来に夢を繋ぐことが出来ます」と乙幡文協会長と坂口組合長は今回の植樹祭を開催できたことに感謝を表した。
 因みに、「アマゾン熱帯林植樹の旅」への参加者は、宮脇氏ほか、三菱商事の秋田実氏(環境・CSR推進室長)、山田岳史氏(総務部・総務チーム)、河野通直・淑徳大学客員教授、小島恒雄夫妻、古川東洋男氏(佐賀)、藁郁子氏(TBS・添乗員)の8人。地元からは、アマゾン森林友の協会の佐藤会長以下スタッフ5人。東京農大北伯分会の山中正二会長、加味根良介氏、大西やすひろ氏(AMCEL社)、塩原優氏(ブラジル三菱商事)、石塚幸寿アマゾン・アグロフォレストリー協会会長などが参加した。
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 トメアスーでの植樹祭で特筆されることは、戦時中に没収された農事試験場が戦後になっても日本人に返還されることなく現在まで市有地となっていた。その土地に、今回、歴史を踏まえて、その試験場跡を日本人の手で運営できるように、自然公園として生かそうと市長と交渉した小長野道則氏の努力は称賛に値する。
 日本人移民の歴史を刻んだ農事試験場跡が、日系農家によって進められてきた森林農法が取り持つ縁で、軌を一にするトメアスー組合と宮脇式植樹方式を取り入れながらアマゾンの環境問題に取り組んでいるアマゾン森林友の協会をタイアップさせ、しかも日系人も利用できる自然公園として生まれ変わろうとしている。トメアスーに、またひとつ、新たな歴史が始まったと言えよう。(下小薗昭仁パラー州通信員)

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