コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年3月19日付け

 日本語の「ツナミ」は、今や国際語であり、欧米やブラジルでも「TSUNAMI」と書く。日本—とりわけ岩手県と宮城県の三陸は、津波危険区域とされ1896年(明治29年)の明治三陸津波は世界に知られる。波の高さが38メートル。死者は2万2千人。家屋の流失・全壊が一万戸を超える歴史的「ツナミ」であった▲そしてまた海の巨大な怒りが爆発。東日本大震災が起こり、岩手・宮城・福島でーいや日本列島が騒乱している。あの怒涛のような荒波に呑み込まれ命を失った人や海の彼方へ家を攫われた人々も数え切れない。仙台で罹災した知人からのEメールによると、あの地震と津波が発生し電話や電気・水道もストップ。やっと復旧し電灯がつき、水道から水がほとばしるのに1週間近くも。それに食べ物も不足とある▲道路も寸断し、東北新幹線も架線切断などの故障で運行停止。ガソリン不足で車も動かせない。さながら陸の孤島なのである。これに加えて福島第1原発の放射能漏れや爆発と—これはもう日本だけではなく、世界中の目が福島を向いている。もし—もしもである。メルトダウン(全炉心溶融)にでもなれば、あのチェルノブイリのような危機も起こる▲自衛隊のヘリが出動し、空から海水を投下し、3号機の冷却に命がけの仕事をしているのは、この恐るべき事態を避けるためなのだ。自衛隊は、陸海空で24万人しかいない。そこから10万人を投入し、福島では被爆を覚悟して危機の回避に全力を上げている。これはもう政治家の「命をかけて」の言葉とは違い、本当の「命がけなのである」。(遯)