コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年4月9日付け

 リオの中学校で凄惨な事件が起きた。余り豊かではない街にある学校に卒業生が侵入し、拳銃で生徒ら12人を射殺し、自ら頭部を射抜いて自殺するという悲惨な事件であり、市民や国民の哀しみの慟哭は大きい。犯人のウエリントン・オリベイラ(24歳)は、エイズに感染の情報もあるが、はっきりしたことは解っていない。恐らく人生を悲観しての乱行と見たいが、いかなる理由にしろ、何の罪もない中学生を殺害する暴力は許せない▼銃乱射と言えば、アメリカであり、コロンバイン高校乱射事件が、よく知られる。ところが2007年のバージニア工科大学での血で血を洗うような惨劇は、教授5名、学生28人を餌食にした歴史上最悪のものであった。犯人は韓国人の趙承煕(23歳)で同大学の英文学4年生であり、犯人の趙は自殺したが、「場面緘黙症」の症状が強く、これを苦にしての蛮行らしい▼リオで拳銃を100発も撃ちまくった犯人も、心の悩みに打ち克つ力に欠けていたけれども、このような事件の容疑者や犯人は、世界的に見ても—同じような心の傷跡を持つ人が多い。そんな心の蟠りを乗り越えて欲しいとは思うが、これは口で言うほどに簡単なことではあるまいし、難しい▼だが、自分が死や恐怖に怯えているからといって生徒や他人をも道連れにするの論理は生まれてこないはずだ。あの学校では、突然—銃声が響き渡り仲間の生徒らが次々に倒れていく。あまりの怖さに生徒らはパニックに陥ったが、ウエリントンには、こんな異様な光景を描くこともなかったし、悲愴な実相も見えなかったに違いない。(遯)