コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年4月20日付け

 東日本大震災の印象が強すぎて、今年の御三家の会長選には関心が集まらないが、今回ほど戦後移民が存在感を見せている年は稀だ。県連では、百周年を仕切った二世の与儀会長に代わって園田会長が戦後移民として返り咲いた▼援協では百周年、援協50周年を立派に乗り切った森口イナシオ氏と争って菊地会長が選ばれた。戦後移民としては原沢氏以来だ。理事の大半が二つのシャッパに重複したことは、援協自体は変らないことを意味する。今まで内部的に決められていた会長の互選が、定款改正によって選挙に形を変えた▼百周年ではブラジル社会への体面上、ポ語の達者な二世を前面に立ててと多くの団体は思っていた。それを無事に終えて、今度は「戦後移民の最後の御奉公」の時代になった。いずれは二世の時代になるが、サンパウロ市周辺は戦後移民が集中しており、このような現象が起こる▼文協会長選では、戦前移民の子供世代(二世、準二世)が中心の上原〜木多体制に対して、谷氏や小川氏を応援する形で戦後移民が立ち向かっている構図だ。文協はいまだ戦後移民が会長に就任したことのない唯一の御三家団体だ▼上原会長時代はあまり地方行脚をしなかった。地方を地盤とする小川氏が力をつけるに従い、木多会長は地方へ足を運ぶようになった。これは小川氏の存在が体制に与えた好影響の一つだ▼常に対抗馬がいる緊張感は体制に活を入れる。対抗馬の存在は有益だ。もし小川氏が今回の選挙で勝ったら、現体制の誰に彼のような地道な活動ができるのか。逆に今回もし会長になれなくても小川氏には良き対抗馬であり続けてほしいと切に願う。(深)