イビウナ庵便り=中村勉の時事随筆=11年5月16日=ブラジル経済の昨今

ニッケイ新聞 2011年5月18日付け

 漸く日本もブラジルに注目しだした。大変喜ばしい。ブラジル特集が新聞・雑誌・TVで目白押しだ。日本の流儀は、上潮も引潮も集中豪雨的なので、心配だが、先ずはブラジルへの関心の高まりを歓迎したい。急拵えの特集は、どれを読んでも代わり映えしないが止むを得ない。時間の経過と共に、質も向上する筈だ。
 昔と違い今は、基礎となる統計資料が入手し易い。日本語では、在ブラジル日本大使館の月刊ブラジルマクロ経済(概要推察する)をインターネットでバックナンバーを含め手軽に入手できる(HP:www.br.emb-japan.go.jp)。便利な時代になったものだ。
 詳しい数字はInternetに任せるとして、ブラジル経済の昨今を以下に箇条書する。
1. GDP:世界の占有率はブラジルの3.3%に対し日本は8.6%、即ちブラジルのGDPは日本の38%、4割弱に迫っている(2010年)。世界第8位
2. 一人当たりGDPはUS$8,628で日本の1979年並み、BRICSの中では最高。
3. 自動車(新車)販売は2010年351万台で、中・米・日に次ぐ世界第4位。
4. 原油生産は2010年214万BPD(バーレル/日)、今や有数の産油国だ。
5. 外貨準備高は2011年3月末現在3,171億ドル、2001年末359億ドルだった故、その間に9倍弱になった勘定だ。もはやIMF詣でを必要としない。
6. 公的債務は2010年末14,756億レアル(GDPの40%)で、2002年の8,923億レアル(同60%)より金額では65%増だがGDP比では20%減になっている。
7. 2007年に対外債権が対外債務を上回り、収支が黒字化した。債務だけを見ると、前2006年末の1,726億ドルに対し2011年3月末は2,792億ドルへと6割増だが、対外債権が2006年(978億ドル)比2,413億ドル増の3,391億ドル、収支は2006年(‐748億ドル)比1,347億ドル増の599億ドルの黒字。
8. サンパウロ株式市場(BOVESPA)は2002年1月12日の13,872から急上昇し、2008年5月20日に最高値73,517を記録した後、リーマン・ショックで暴落2009年10月2日に最安値29,435を付けたが、2011年4月末には66,312まで回復している。世界の株式市場で最も回復が早かったと言われている。
9. 失業と平均賃金(月収)は2011年3月現在、各々6.5%と R$1,567で、改善著しい。因みに、2003年は失業率11%、平均月収 R$1,246だった。
10. 金利と為替政策には苦労している。インフレ抑制の為に高金利の維持を余儀なくされている。高金利は好まざるホットマネーの流入を招き外為レアル高を招来、平衡税と為替介入(ドル買い)で対抗しているが、上述の外準急増をもたらしている。金利は欧米並みを指向するも、成功していない。苦労の跡を辿ると、2000年の19%、2006年の26.5%、2011年の12%と乱高下している。外国為替はこのところ、+/−R$1.6=US$1 (R$1=¥50)で推移している。