コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年7月1日付け

 戦争直後に祖国救援運動として送ったララ物資に匹敵するぐらいの義捐金が、東日本大震災の被災者のために集まっていることは移民の日特集号(6月30日付け)で報じた。6億円というのは尋常な金額ではない▼ララ物資の時は、コロニアが勝ち負けに分かれて物騒な争いをしていた。祖国救援やサンパウロ市400年祭の準備を通して団結を固めて統合に向かっていった。90年代に求心力を失ったと言われたコロニアが、今回は久々に底力を見せている感じがする▼同特集座談会で園田昭憲県連会長が言っているように、「今までは日本が親代わりで助けてくれた。これからは・・・」という覚悟は象徴的だ。何でもかんでも日本政府に支援を乞う姿勢を「コロニア乞食」と自嘲する論者がかつていたが、今は流れが変わった▼残念なのは日本国大使館がこの調査に協力してくれなかったことだ。「どの団体がいくら?」と聞いているのではなく、総額と団体名を聞いているだけ。せめて総額だけでも教えてもらえれば、さらに実態に近い数字が出せた。これはコロニア史というよりは、日伯交流史に残る重大事だ。不完全な部分が残ってしまったことに遺憾にたえない▼正直言って百周年の時ですら団結といえるものは少なかったが、今回を見ていると、主旨さえ賛同できるなら今もコロニアは一体化した動きが出来る——との希望も生れた▼同座談会の中で、山内淳元文協会長から「世代交代」という言葉への異論が出された。今回は一世、二世、三世、非日系関係なく、みなが日本の為に義捐金を拠出したという意味で、新しい形の日系共同体の出現を予兆させるものかもしれない。(深)