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■記者の眼■懇談会で外相がコックリ=話があまりにツマラナイ話?

ニッケイ新聞 2011年7月2日付け

 30日晩に文協貴賓室で行なわれた日系団体代表との懇談会で、松本剛明(たけあき)外務大臣のまぶたが、あろうことか、ゆっくり、ゆっくり閉じていった。あまりにも緊迫感のない話に終始した日系団体代表者側に責任がありそうだ。
 松本外相の日程は殺人的に過密なもの。その合間をぬってなんとか日系団体との懇談会の時間を設けた。ただでさえ時差ボケの大変な中での連日の激務、さらには早朝から飛行機でブラジリアに向かって、パトリオッタ外相と重要な会談をし、円借款の書類にサインをするなどの本来の大仕事をりっぱに果たした。
 その上で、当地ならではの〃義務〃(外務省関係者談)である日系代表との懇談会に午後8時から臨んだ。心身ともに疲労困憊の状態であったことは想像に難くない。
 ところが肝心の日系団体代表らの話はなんら緊張感もなく、誇らしげに自団体の説明をしておしまい。数年に一度しかないこのような好機には、かつてなら何か切実な相談をしたり、前向きな協議が必要なことを提案したりすることが見られたが、今回はほとんどなし。
 冒頭、木多喜八郎文協会長はいつも通り他人が書いた日本語の文章を棒読みし、上原幸啓前文協会長にいたってはお得意のUSPの日系学生が15%もいるとか、百周年の時にアルジャジーラ、BBC、ルモンドなど世界のマスコミから取材されたという話…。
 とどめは某代表だった。普段は達者な日本語を駆使するエリート二世だが、この時は珍しく緊張していたのか、記者らが聞いても文脈が分かりづらい話になっていた。
 我慢しかねた大臣はついに徐々にまぶたが重くなり、視線が怪しくなってきた。周りの音が子守唄のように聞こえ始めたかもしれない。あっと気付いた時には、写真のようにしっかりと目蓋が閉じられていた。超多忙の中で、この話では無理もない。
 例外は、二宮正人元史料館運営委員長の、日伯で査証免除協定を結んではどうかという積極的な提案だった。
 「これだ!」とばかりに大臣はしっかりとまなじりを据え、「今日もパトリオッタ外相とその話をしたばかり」と語気も鋭く食いつき、きっちりと仕事ができるところを見せた。どんな名バッターでも、快投するピッチャーがいないと名試合は演じられない。今懇談会において、唯一の救いであった。
 当日出席していたある日系団体代表も「確かに居眠りされていた。でも無理もないですよ。せっかく来ていただいてすごくあり難かった。なのにあの話じゃ・・・。もっとブラジルからの真摯な想いを伝えるべきでした」と大臣に同情しきり。
 外務省から日系代表との懇談は〃義務〃だといわれるぐらいの重要性が認められているのだから、大臣が眠気に襲われるどころか身を乗り出して聞きたくなるような、もっと身のある話をしてはいかが。(深)

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