パラナ州アプカラナ市=全伯最多1万本の桜咲く=さくら祭り今年も大盛況=市が中心になり植樹進め

ニッケイ新聞 2011年7月6日付け

 「市の協力によって、現在市内には1万本の桜が咲いています。ブラジルでは最も数が多いはず」—。そう語るのは、アプカラナ文化体育協会(石田健一会長)の粥川幸男評議員会長。同文協には日本庭園があり、敷地内に植えられた100本の桜の木が、この時期になると毎年濃いピンク色の花を咲かせ、祭りを美しく彩る。6月16日〜19日に第17回目となる文協主催の「さくら祭り」が開催された。4日間で、地元の非日系人を中心に約3〜4万人以上が来場し、大いに賑わった。

 同市の「さくらの町」としての歴史は、70年代末に同文協の老人会がサンパウロ州カンポス・ド・ジョルドン市を訪れ、桜の苗木を持ち帰ったことに端を発する。その後82年に文協敷地内と湖の周囲に100本ずつ植えられ、美しく咲き、90年代前半にグローボTVで取り上げられた。
 「それを契機として名前が知られるようになったので、市が率先してどんどん桜の木を植え始めました。今では市内各所に計1万本ほどの桜の木があります」と粥川氏(67、二世)。
 福田マリオ実行委員長は、「祭りは大成功。昨年より会場を広くしたのでより規模が大きく、余裕のある祭りになった。皆満足していると思う」と笑顔で語った。
 ローランジア在住の今津三代子さん(2世、74)は、ローランジア婦人会としてさくら踊りに参加。「サンパウロから先生を招いて習っている。毎年頑張って踊っています」と楽しそうな表情を見せた。
 食事コーナーやステージ、会場中央のやぐらは桜の花や木を模した飾りで一面彩られ、ステージでは地元や近隣の町の各団体による日本語の歌、太鼓や踊りなどが披露された。夜は、連日バンドのショーが祭りを盛り上げた。
 一番の目玉は、地元アプカラナやロンドリーナ、アラポンガス、ローランジア、シアノルテ、カルロポリスなどパラナ州各地の団体が集まって披露する盆踊りで、通称「さくら踊り」。桜の花がついた枝を持ち、太鼓の音とともに色とりどりのハッピを着た人々の幾重もの円が、やぐらの周りを踊る。
 粥川氏は「桜は日本の象徴。アプカラナは最初主に日本人が入植した町で、開拓者へのオマージュとしてさくら踊りと名付けた」と話す。
 他にも、琉球國祭り太鼓・ロンドリーナ支部、マリンガーのYOSAKOIソーラングループのショーには多くの観客が集まり、大きな拍手を浴びていた。
 食事コーナーにはうどん、天ぷら、たこ焼きなど様々な食べ物の出店が並んだ。中でも一番人気は「すき焼き」。薄味の肉や野菜とそばを組み合わせた同文協のオリジナルで、毎年長い行列が出来るという。
 また、最終日には山口登在クリチーバ総領事夫妻、ジョアン・カルロス・デ・オリベイラ・アプカラナ市長夫妻が会場を訪れた。
 山口総領事はステージで、「アプカラナは桜がたくさん咲く美しい街。日本政府代表として、日本移民やその子孫を受け入れてくれた市に感謝したい」と挨拶した。
 アプカラナ市は州都クリチーバから北に370キロ離れた町で、人口12万人。36年に10家族が入植、そのうち8家族が日本人だった。さくら祭りは、粥川氏が日本文化の普及のために94年に始めたもので、今や市の祭りとしては最大規模を誇る、地元に根ざした伝統ある祭りとなっている。
 アプカラナの市の歴史は、同市を開拓した日本移民の歴史と重なるといっても過言ではない。市内の1万本の桜は彼らの功績を称えるかのように毎年美しく咲いている。