コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年7月29日付け

 ブラジルには何人の障害者がいるのか——。本紙既報のろうあ者による障害者へのエイズ予防啓蒙活動の資料を読んでいて気になる点がいくつかあった▼まず同資料に「ブラジルには約2500万人の障害者がいる」とあり、その数字の多さに驚いた。00年のIBGE調査で確認すると「人口の14・5%が障害者」とあったので計算するとほぼその数字だ。しかし、人口の7人に一人が障害者という国家がありえるのか。大きめの家族なら必ず一人は障害者がいる計算だ▼日本では06年の厚生省調査で人口比にして2・7%だ。当地とは一桁違う。おそらく「障害者」の意味が異なる。この統計数字を、日本の常識で読み解くと現実認識を間違う▼例えばIBGE統計を詳しく見ると視覚障害の場合、全盲は15万人だが「焦点を合わすことに困難がある人」が240万人もいる。後者の大部分は、実は眼鏡の問題ではと思い当たった。貧困で適当な眼鏡が買えないという問題だ▼15歳以上の識字率は87%だが障害者に限ると72%。つまり全国民の13%が文盲だが、障害者だけだと28%になる。87%といっても、うち26%は半文盲(名前は書けるが新聞などの文章は読めない)というレベルだ。健常者の2倍との比率を単純に障害者の半文盲に適用すれば52%になる。格差社会の歪みが最も集中している層なのは間違いない▼同資料にペルナンブッコ州人口が「8万人弱」とあったのには開いた口が塞がらなかった。実際は879万人もいる。せっかく志の高いプロジェクトなのに、現地への認識の浅さを疑わせるから、この種の間違いには気をつけた方がいいのでは。(深)