大震災で禁輸、在庫枯渇=食品輸入関係者に聞く=韓国、中国の代替品で凌ぐ=第一陣まもなく到着か

ニッケイ新聞 2011年8月6日付け

 リベルダーデの『らーめん和』は、日本製の麺輸入の手配に支障が出たとして、5日を持ってラーメンの提供をいったん打ち切った。8日から9月中旬まで、うどんやカレーなど別メニューで営業するという。このように東日本大震災の影響で、3月から事実上日本からの食品の輸出が停止したままで、サンパウロの日本食材店や日本食レストランでは品不足、在庫切れなど様々な影響が広がっている。関係者に話を聞いた。

 「らーめん和」を経営するヤマト商事(高木和博社長)では、日本酒、冷凍食材、乾麺、うどんなど全般的な日本食材の輸入を手がけている。担当の前田房徳さんは、「3月11日以降、輸入は全く止まっていた。6月末にようやく両国が同意して動き出した」と語る。ラーメンの麺に関しては既に注文が済んでおり、同社では9月中旬には届くと見込んでいる。
 サンパウロ市内を中心に各地の日本食材店でも品不足が起きている。リベルダーデで日本食品を扱う某商店では、菓子、ふりかけ、醤油、味噌、カップラーメン、ざるそばなどが特に不足しているという。
 同店の担当者は、「今店頭に並んでいるものも、在庫がなくなるともうおしまい。政府の対応が遅かった」と憤りを見せる。
 また、リベルダーデの別の商店では納豆や昆布だし、天ぷら粉、かつおぶしなどが不足している。「入ってこないものは韓国製や中国製で代替しているが、お客さんも日本製を愛用している人が多いので困っている」とため息をつく。
 大手醤油メーカーのキッコーマンでは、シンガポール、米国の工場で生産された醤油を輸入することで対応している。同社ブラジル駐在員事務所の職員は、「日本製の醤油は、輸入再開まで2ヵ月ほどかかるのでは」と漏らした。
 4月11日に発表されたブラジル保健省傘下の国家衛生監督庁(ANVISA)の決議により、日本製の全輸入食品にはポ語の申告書の添付が必要とされた。結果としてその後約2ヵ月近く、ブラジル側で日本産食品の輸入ができない状態になった。そのため、リベルダーデの商店では全体的な日本食品の不足に陥り、中国や韓国などの商品で埋める状態が続いた。
 しかし、6月30日にブラジリアで行われた日伯外相会談で、ブラジルが日本からの輸入食品に義務付けている放射性物質についての安全性証明のための政府書類提出を、12都県(東京、福島、群馬、茨城、栃木、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、千葉)産の食品に限定することで合意し、ようやく6月末から日本の農水省で申告書発行の申請を受け付け始め、手続きを経て随時出荷が開始されている。
 ただし、「必要書類を準備するには時間と手間がかかる。輸入業者の9割は、まだ再開の目処が立っていないのでは」と話し、完全な解決までには時間かかるのではという業者の声も聞かれた。
 駐伯大使館の農業・食品担当者は、「通常、出荷から到着まで船便だと40〜50日かかるので、最も早いものならまもなく到着するのでは」と話しており、今後は輸入が正常化に向かう方向にあるとみているようだ。