旧都で育むニッポン~ペトロポリス「BUNKA-SAI」~(2)=リオ日系団体も駆けつけ=市が全面協力、「連帯のお返し」

コーラスグループ・光の公演の様子

コーラスグループ・光の公演の様子

 午前10時頃、リオ市郊外のバレンサ市から、太鼓とコーラスグループの一行が3時間半をかけてバスで到着。迎えた安見さんらが博物館内でカフェを振る舞った。
 数年前に発足したバレンサ日伯協会は、約60人が所属、日系人に限らず日本に興味を持つ非日系人も。
 開始時間が遅れそうになり、安見さんはやきもき。「もうすぐ始まりますので、早めにお願いします!」と声を張り上げる。「出場予定者がドタキャンしたり、開始時間が遅れるのはしょっちゅう。文化の違いに苦労しますよ」と苦笑い。
 太鼓グループ『雷太鼓』は、晴れ上がった空の下、午前11時から公演。リーダー以外は全員非日系の若者だ。同市での太鼓の演奏は珍しいのか、集まった人は興味深そうに眺めていた。
 博物館の絵画作品の前で発表したコーラスグループ「光」は「雛祭り」「炭坑節」「上を向いて歩こう」などを楽しそうに歌い、温かな拍手が送られていた。
 指揮と伴奏を務めたアントニオ・ダ・シルバさん(31)は、大学で音楽と歴史を教える。
 「日系のメンバーが教えてくれたので、歌の解釈は難しくなかった。君が代も教えています」と笑顔を見せた。
 メンバーの堀田照子さん(73、二世)は「恥ずかしかった」と笑いながら、「日本語がわからないメンバーは発音の違いに苦戦していたみたい」と話していた。
 ほか、リオの日系協会、日伯文化協会、カンポ・グランデの各団体が参加した。
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 ペトロポリス日系協会の第一書記、山本カチアさん(45、三世)は、ペトロポリスに2番目に入植した2家族の子孫。08年の移民百周年イベントを機に安見さんと知り合って以来、地元メディアで広報するほか、協会メンバーとして文化祭の開催に携わってきた。
 「来場者で『来年は自分も!』という人もいるので参加者は年々増える。大きな団体があるわけではなく、個人レベルで日本文化を愛している人が多い」とする一方で、特別にスタッフを雇うなど様々な面での市の協力に感謝する。
 文化祭を担当する、市文化観光局のペドロ・トロヤッキ氏は「最初に日本公使館が置かれたこの地で、日本文化を普及、保存していくことは非常に重要なこと」と力を込める。
 今年、市は3度目の文化祭開催にあたり、東日本大震災を受けて共催を自粛したリオ総領事館とは反対に、「被災地の人々に、エールを送るようなイベントを」と提案してきたという。
 「1月にリオ山岳地帯で集中豪雨があり被害が出たさい、日本人から送られた『連帯』の気持ちを返したい、という思いもあった」と明かした。(田中詩穂記者、つづく)