コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年8月27日付け

 「権腐十年」。いかに優れた政治家でも、権力の座につくと10年もすれば、政権に腐敗が起こるの意味だが、これは東西に共通する。この国でもまだPT(労働者党)が野党だった頃、連邦下議の具志堅ルイス氏は、若きコーロル大統領の不正献金を追求し、辞任に追い込み、政界の論客の評を高くした。が、ルーラ氏が天下を取り広報担当の長官になると、金銭的な醜聞になり退職に追いやられている▼これは日本でも同じだし、吉田内閣の昭和27年に—自民党の佐藤栄作幹事長が造船疑獄に関与の疑いで逮捕請求されたときに犬養健法相が指揮権を発動し、これを抑えたことがある。だが—もし逮捕されていたら佐藤栄作氏の政治生命は幕を下ろしていたに違いない。今のジウマ大統領は4閣僚を更迭したが、これも汚職や暴言であり、将に「権腐十年」の見本なのである▼北アフリカのチュニジアに始まる民主化の激動は、大国・エジプトをも倒し、30年も政府を率いたムバラク大統領は今や檻に入れられての裁判になり、死刑の判決もの報道もある。そして—40数年の独裁者リビアのカダフィ大佐も民衆の力の前には、白旗を掲げるしかなかった。ご本人は、何処かに逃亡したらしく消息不明ながら息子らの死亡や拘束の記事もあるので「敗北」は間違いない▼何よりの証拠は反体制派の代表らが首都に侵入していることだし、ミサイルや戦車軍団をもってしても、専制だけでは、もう国の統治はできない。英仏伊の軍事的な攻撃も大きいが、民衆が結集し油然とまき起こる力には鉄壁の守りも勝てない。(遯)