コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年8月30日付け

 政党の代表選びというのは難しい。自民党総裁選は激しい闘いであり、札束が乱れ飛び3陣営から取ったの「サントリー」が流行語になり、カネが切り札が政界の常識になったり、世論の批判も強かった。そんな暗い世界に明るい光明を投じたのが、鳩山一郎首相の退陣を受けた1956年12月の石橋〜岸の総裁争いだった▼鳩山政権で幹事長の岸信介は絶対有利の見方が大勢を占めていたが、1回目の投票で過半数を獲得する候補がいなく決選投票になったら、2位の石橋湛山と3位の石井光次郎が連合し、岸を6票の僅差で破った話は今も語り継がれている。この政界椿事は石橋の側近・石田博英が練りに練った戦術だとされる▼今回の民主党代表戦は2位と以下の候補が結束したのだから、さすがの小沢派も勝てない。若い頃から革新的な経済評論で鳴らした海江田氏も敗北には悔しかったろうが、これで小沢一郎氏の復権は遠のいたのは否定できない。新代表の野田佳彦氏も最大勢力を率いる小沢を完全無視はできないだろうが、民主党もやっと正常化に向かっていると見ていいのではないか▼野田首相は、きょう誕生するが、どんな閣僚や幹事長ら党3役を選ぶのかでマスコミの現場は大変な騒ぎだろうが、大震災や円高と日本は最大の危機に陥っている。1万6千人近い死亡者を出してからの復興には、野田氏の主張する民自公の「大連立」の視野も大切だし、急激な円高による産業の空洞化も目立つ。ここは国会の「ねじれ現象」を超えた高い水準での政治を心がけ、難問の解決に尽力してほしい。(遯)