日本人の心の歌=今なお褪せぬ昭和の名曲=ひばりと激動の時代蘇える=過去最多の観客数1200人

ニッケイ新聞 2011年8月31日付け

 「日本人の心の歌〜ひばりと昭和の名曲集〜」(同実行委員会、ニッケイ新聞主催)が21日に文協大講堂で開催され、過去最多となる約1200人が鑑賞した。コロニアを代表する57人の歌い手による58曲の熱唱を通して、辛い戦争と高度経済成長を経た激動の時代である昭和が、観客達の記憶と共に鮮やかに甦ったようだ。

 開場前から当日券を求める列ができ、中には「リオから夜行バスで来ました」と朝7時半から待つ人もいた。
 暗い終戦後を勇気付けた「りんごの歌」で幕が開け、最年少歌手である吉田アレクシアちゃん(6、四世)の「九段の母」が続いた。ひばりがこの曲を出征する父に歌ったのが、ちょうど6歳の頃。アレクシアちゃんは「ザ・フレンズ」の生演奏に負けない歌唱力で見事に歌い上げ、観客はひばりに姿を重ねていた。
 道康二実行副委員長と井川ルシア氏の司会で曲の年代順に進行し、曲が生まれた時代背景やひばりの物語を交えたナレーションと、舞台スクリーンに映る当時の映像が雰囲気を盛り上げた。
 「長崎の鐘」を歌ったのは、最年長85歳の羽田宗義さん。6人の女声コーラスの中、円熟の歌声を披露した。
 小野千恵美さんの「お祭りマンボ」では、踊りと太鼓が一体となり、会場からは、「わっしょいわっしょい」と掛け声が響いた。昼食時には鳥取県人会の傘踊りが観客の目を楽しませた。
 午後の部に入り、「見上げてごらん夜の星を」「悲しい酒」「愛燦燦」など名曲が続く中、特に観客を惹き付けたのは谷川セルジオさんが披露した「群青」だった。東宝の映画『連合艦隊』の主題歌となった曲で、谷川さんは海軍の白軍服をまとい、兵隊の行進で舞台に立つと最敬礼。谷川さんは涙を流しながら海に散りゆく兵士を歌った歌詞を熱唱し、会場は割れんばかりの拍手でそれに応えた。
 トリを飾ったのは本紙上の希望曲アンケートで1位となった「川の流れのように」。1番は出場した歌手全員で合唱し、2番からは客席も一体となって歌い、大団円のうちに幕を閉じた。
 終了後は出演者が玄関ロビーに並び、来場者は一緒に写真を撮ったり、「よかった」と声をかけるなど和やかな雰囲気に包まれた。企画、演出を務めた道副委員長は、「歌手達は今までで一番上手だった。観客の皆さんも最後まで席を立つことなく見入ってくれた。続けてきてよかったです」と振り返った。
 なお、協力券と会場に設置された募金箱で集められた東日本大震災被災者への義捐金は、宮城県人会へと渡された。