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昔話を移民、帰伯子弟に=お芝居出前プロジェクト=日本の俳優集団まりまり

ニッケイ新聞 2011年8月31日付け

 日本や世界の昔話を5分ほどの寸劇にして、高齢一世や帰伯子弟に届けようという「日本ブラジルお芝居出前プロジェクト」を進める日本の俳優集団「お芝居デリバリー・まりまり」の萩原ほたかさん(東京)、寺本雅一さん(27、東京)、それを支援する静岡文化芸術大学(浜松市)国際文化学科長の池上重弘教授(48、北海道)が28日に来伯した。
 「まりまり」の寸劇は観客の目の前で演じられ、黒一色の衣裳で、道具や舞台装置、照明や音響も使わないことが特徴だ。演目は「浦島太郎」「大きなかぶ」「鶴の恩返し」「金の斧銀の斧」などで、日ポ両語を織り交ぜ、1話につき5分。「誰もが知っている普遍的な物語を共有する中で、イマジネーションを働かせてほしい」と萩原さん。
 このプロジェクトは、「まりまり」の芝居を観た池上教授が「色んな人を繋ぐ力がある」と考え、同大学の多文化共生に関する実践的研究の一環として、浜松で活動する日伯交流協会に協力を呼びかけて発足した。
 まずは浜松市内で試験的に公演して好評を博したことから、同協会が「まりまり」のブラジル行きを支援するに至り、児玉哲義同副会長(二世)が調整役を買って出た。
 萩原さんは「高齢の移民の方が多く住むブラジルに前から来たいと思っていた」と嬉しそうに語り、「日本の懐かしい空気を伝えたい。今回は顔見せで、喜んでもらえる内容を探り、来年はブラジル国内で本格的に巡演できれば」と意気込む。
 また一世のほか、近年帰伯したデカセギ子弟、日本語を学ぶ子供達なども対象とする。
 一行は9月1日午前11時から老ク連、2日午後3時から宮城県人会で公演を行った後、3日にスザノ入りし、5日に同地で公演予定。6日はピラール・ド・スール日本語学校でも公演予定。7日にサンパウロ市に戻り、8日午前11時から静岡県人会で公演を行い、9日に帰国する。
 宮城、静岡両県人会での公演は事前申し込み不要、入場も無料で、「どなたでもぜひお越し下さい」と多くの来場を呼びかけている。
 帰国後は、「ブラジルで得たメッセージを日本に持ち帰り、日伯交流のお芝居会、展示会などに生かしたい」という。
 池上教授によると、今後、浜松の中学校区とブラジル人学校を経営する組織が連携を取ることを目指し、生徒達に一緒に芝居を観てもらうという構想もあるという。「芝居を通して、隔絶している両者が繋がればと願っている」と池上教授。
 萩原さんは、「日本にはブラジルに思いを寄せる人も多くいる。両国の思いを運ぶような〃伝書鳩〃のような役割を果たしたい」と笑顔で話していた。
 「まりまり」は東京都を拠点とし、俳優、音楽家、舞踏家など8人の役者が所属。05年に活動を開始し、「劇場に出かけられない人に芝居を届けたい」として、学校、病院、企業や老人ホーム、福祉施設、知的障害者の施設などで興行を行うほか、欧州、メキシコなどの劇場、学校、文化施設にも出向き、国際交流を図っている。

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