コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月11日付け

 師と仰ぐ故田中角栄元首相や金丸信氏と同じようにまさか裁判所の席に座るとは、さすがの小沢一郎氏も思いもしなかっただろう。あの実刑判決をうけた100回を超える田中裁判をすべて傍聴したという小沢氏だが、公判では「国家権力の乱用」と凄まじいばかりの検察非難が飛び出し、全面無罪を主張しているが、元秘書3人は先頃、有罪になっているし、これだけは来年の4月に予定されている判決がでるまでは神さまだけが知っている▼あの4億円の謎については、検察陣も一所懸命に捜査したけれども、結局は「証拠不足」で小沢氏を不起訴とした。ところが、こうした結果に不満な検察審査会が、事件を再調査し強制起訴したのが、この裁判である。小沢氏のが初めてのケースだが、検察官の役も指定弁護士が行うなど、一般の裁判とは司法官の構成などが異なる。新しい制度なので移民の多いブラジルではわかり難いが、判決の効果は裁判所と同じであり、遊び事で済ませるわけには行かない▼あの「陸山会」の土地取引を巡り、小沢氏が用意した購入費4億円を隠蔽するために石川智裕衆議ら元秘書と共謀して虚偽記載したというのが起訴内容だが、これを立証する証拠は一つしかない。元秘書3人の裁判でも採用されなかったのだが、石川衆議の自供書が唯一であり、これだけでは証拠能力が弱いの指摘もあるし、検察審査会にとっても、裁判の楽観は許されない厳しさもある▼公判の後、記者会見した小沢氏は、メモを片手に公判での発言を再演し強気の姿勢を崩していないが、政治家として「真実」をぜひとも語ってほしい。(遯)