コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月14日付け

 長らく「ブラジル日系人150万」「在日ブラジル人30万」とされてきたが、それぞれ10万増減した数字に訂正しなければいけないようだ。法務省の発表によれば、08年末に31万2582人だったブラジル人は、今年6月末で22万1217人となっている(本紙5日付け)▼つまり2年半で9万1千人が日本を出たことになる。もちろんブラジルに帰国したと考えるのが自然だ。戦前の移住ピーク時でも、これほどの人口が動いたことはない。日伯交流史に残る〃民族移動〃といえよう。しかし、ブラジル社会に溶け込んでしまったのか、コロニアへの影響はまるで見えない。日本語のできる若い世代も多いだろうし、今の日本を知るこの層を埋もれさせるのは惜しい▼先月末から今月にかけてクイアバであった七夕祭りに協力した戦後移民の中沢宏一・宮城県人会長によれば、「現地の文協関係者と上手く協調が取れた。日本帰りの二世が多く、感覚がかなり近かった」と話し、「彼らと今後、何らかの活動が出来ないか」と模索している▼ピラール・ド・スールであった敬老会では、日本帰りの姉妹による獅子舞が披露された。二人は「日本で所属していたようなクラブを作りたい」と意気込んでいるとか。地元にとっては新しい文化、本人らも活躍の場を見つけたわけで喜ばしい。こうした例はこれから徐々に目に見えてくるのだろうか▼地方では「日本から帰ってきた人は文協に寄り付かない」との声も聞くが、やり方、橋渡しをする人材にもよるだろう。新しい〃血〃をどう取り込むかに、コロニア活性化のヒントが隠れているような気がする。(剛)