【祝 福博村入植80周年】シメジをビン栽培=日本で指導 林幸美さん

ニッケイ新聞 2011年10月22日付け

 林幸美さんは1946年8月21日、長野県上伊那郡宮田村の出身。1971年4月12日に渡伯、福博村に入植し採卵養鶏を始めた。1996年から養鶏と兼業でシメジ(ヒラタケ)のビン栽培を始め、2001年に5万羽養鶏を廃業し、シメジ栽培を専門に始めた。
 シメジ・ビン栽培には生産設備が必要で、生産者がまだ少なく値段が安定していること、技術を磨きながら小規模から始めることができること、ブラジル人の経済力向上と共に健康志向が高まっており、シメジ栽培が有望産業と考えられること、福博村のように都市近郊の農業が衰退している地域に向いていること、などの理由でシメジ栽培を始めた。
 ビン栽培は、おがくずにトウモロコシ、小麦ぬか、大豆かすを混ぜ、120度の圧力がまにかけて殺菌したものをビンに詰め、きのこ菌をつけて培養し、菌糸を除去すると、その刺激でシメジが発芽する。
 現在、従業員30人を雇用し、月産12トンのシメジを生産している。ほかに少量だがエリンギをビン栽培している。
 林さんは「有機肥料をやりすぎると、雑菌も同時に増やすことになり、結果的に生産性が落ちる」と考えており、『有機農業』よりも畑を山林と同じ土に変える真の自然農法を目指す。できるだけ人間の手を加えずに、自然の仕組みを応用する。日本に何度も行って講演しているが、聴講者から抱えている問題を聴き解決策を考えるという意味で「教えられる立場」にあるとの理由で講演料は取らないという。
 福博村は湖の上流にあり、将来は農薬、化学肥料の使用が禁止される。村の農業が生き残るためには、生産性が施肥栽培に勝るとも劣らない〝無施肥・無防除〟の『真の自然農法』以外にない、と考えている。
 林さんの農業思想は、同じ長野県出身で新宗教GLA(神の光)を創始した高橋信次、シュタイナー教育で有名なドイツの神秘思想家ルドルフ・シュタイナーの影響を受けているという。