念腹忌全伯俳句大会=故人を偲んで句をひねり=兼題1位は鈴木文子さん

ニッケイ新聞 2011年10月25日付け

 サンパウロ木蔭俳句会が朝蔭発行所の後援を受け、『第三十三回念腹忌全伯俳句大会』を16日、老人クラブ連合会会館で開催した。悪天候にも拘わらずサンパウロ市内および近郊を始め、ブラジリア、マットグロッソ、リオもから直弟子、孫弟子ら約80人が参集、念腹氏を偲びながら、句をひねった。

 祭壇には念腹氏と妻潔子さんの遺影、また5月に逝去した佐藤牛童子氏の遺影や掛軸が掲げられた。多数の菊、熱帯の花や果実が供えられた。
 樋口玄海児さんの司会で、念腹夫妻と牛童子氏並びに先没句友の霊に対して厳粛な黙祷が捧げられ、続いて木蔭俳句会の栢野桂山会長や寿和さんが開会の辞を述べた。
 参加者らは「念腹忌」「潔子忌」、当季雑詠に関する席題をもとに4句ずつ投句。選句では、参加者は4句、特別選者は6句を選んだ。
 昼食時は選者らが、念腹氏にまつわる思い出話をユーモアを交えて紹介、大会の緊張した空気が解された。続いて披講が行われた。
 表彰式では、寿和選による兼題特選賞、席題特選賞受賞者に朝蔭発行所寄贈の「朝蔭雑詠選集」と黄菊、代表選者による兼題特選賞で1位に輝いた鈴木文子、2位の笹谷蘭峯、3位の西山ひろ子各氏にトロフィーが贈呈された。
 参加者らがデコポン、ウイスキー、果物や饅頭、手製の葉書などを贈りあい、和気藹々の内に大会は終了した。

 【代表選者の兼題特選句】
◎浅見天童選
引き継ぎし篤き主宰に菊薫る    西山ひろ子
◎伊津野静選
出迎えの握手は温し念腹忌     田口やよい
◎伊津野朝民選
土の香をかき立つ喜雨の来りけり   新津稚鴎
◎遠藤甲山選
念腹忌師を恋ふ心は皆一つ     西森ゆりえ
◎栢野桂山選
ジャカランダ仰ぐも敷くも紫に   二見智佐子
◎菊池信子選
俳諧国異国に建てし念腹忌     永田美知子
◎纐纈喜月選
アマゾンの陽の色に咲く牡丹蕉     星野瞳
◎香山和栄選
念腹忌誇りに生きて炭を焼く     山田富子
◎小橋矢介夫選
今に語り継がれの遺句や念腹忌   吉田しのぶ
◎串間いつえ選
ジャカランダ咲けばめぐり来念腹忌   星野瞳
◎木村都由子選
突く杖に秘めし闘志や念腹忌     栢野桂山
◎小林エリザ選
後継の寿和師守り立て念腹忌     前田昌弘
◎笹谷蘭峯選
川底に牛馬の足跡ある乾季      遠藤甲山
◎佐藤孝子選
遺志を継ぎ覚悟の船出念腹忌     鈴木文子
◎杉本絃一選
熱帯季語ひらきし移民念腹忌     栃沢秋穂
◎鈴木文子選
引き継ぎし篤き主宰に菊薫る    西山ひろ子
◎栃沢秋穂選
ホ句の道曲げず崩さず念腹忌     林とみ代
◎富重久子選
ブドウ村イチジク村につばめ来る  樋口玄海児
◎永田美知子選
行脚の師偲んで励まん念腹忌      野村康
◎新津稚鴎選
ジャカランダ落花踏むまじ潔子の忌 木村都由子
◎野村いさを選
卒業のなきホ句の道念腹忌      栢野桂山
◎小斎棹子選
残業のふえしと喜ぶ春便り      笹谷蘭峯
◎野村康選
遺志を継ぎ覚悟の船出念腹忌      野村康
◎浜田一穴選
師の忌へと旅立つ朝の花コーヒー   笹谷蘭峯
◎林とみ代選
遺志を継ぎ覚悟の船出念腹忌     鈴木文子
◎樋口玄海児選
師の忌へと旅立つ朝の花コーヒー   笹谷蘭峯
◎二見智佐子選
後の師も黄泉路に召され念腹忌   吉田しのぶ
◎星野瞳選
遺志を継ぎ覚悟の船出念腹忌     鈴木文子
◎三原芥選
ホ句の道曲げずくづさず念腹忌    林とみ代
◎村上士郎選
引き継ぎし篤き主宰に菊薫る    西山ひろ子
◎吉田しのぶ選
出迎えの握手は温し念腹忌     田口やよい
◎湯田南山子選
遺志を継ぎ覚悟の船出念腹忌     鈴木文子
 【席題句  寿和選】
出迎えの握手は温し念腹忌     田口やよい
潔子忌や女性俳句の花盛り     小橋矢介夫
一と年の意義の深さよ念腹忌    二見智佐子
三代の継承麗し念腹忌 
      田口やよい
修業僧めける句行脚念腹忌     湯田南山子
背を丸め歩くを正して念腹忌     不破吏子
突く杖に闘志を秘めて念腹忌     栢野桂山
句の道を歩み初めて念腹忌     山下差智子
敬愛し遺影懐かし潔子の忌     吉崎てい子
師を語る友羨みて念腹忌
       富岡絹子
萌ゆる芽の息吹にそっと触れてみし  杉本絃一
遠来の常連ぞくぞく念腹忌      原はる江
蓬餅作る嫁日々楽しさふ
       彭鄭美智
あるがまま心のままの句念腹忌    児玉和代
夏来る参加者多きエコツアー     遠藤甲山
古への手紙繙く念腹忌
       富重久子
行脚の師偲んで励まん念腹忌      野村康
コレイオも銀行もスト春寒し     不破吏子
師の逝けど礎揺るがず念腹忌     児玉和代
◎特選句
デコポンと舌噛みさふな忌の供物  佐藤美恵子
遺志を継ぎ覚悟の船出念腹忌     鈴木文子
引き継ぎし篤き主宰に菊薫る    西山ひろ子
永らえて一期の佳き日念腹忌     伊津野静
まみえずも孫弟子たりと念腹忌    武田知子
潔子忌や閨秀俳人意気高し     湯田南山子
念腹忌師を恋ふ心は皆一つ     西森ゆりえ
詠むといふ生きる証を念腹忌     小斎棹子
アマゾンの花と百花の念腹忌     笹谷蘭峯
念腹忌初心にかえれと遺影笑む   小橋矢介夫
石童丸の琵琶に涙す念腹忌      栃沢秋穂