写真家・仁尾帯刀さん(40、兵庫)=FUNARTE現代美術賞に

ニッケイ新聞 2011年10月27日付け

 ブラジル文化省FUNARTE(ブラジル芸術基金)の2011年度現代芸術賞を受賞した。
 視覚芸術全般が対象。同基金が国内主要都市に置く文化施設ごとに毎年2回の公募で選ばれる。
 受賞作品『Escultura do Inconsciente』(無意識の彫刻)は、サンパウロ市内で5年間撮り続けてきた建築物の写真25点。
 美しいデザイン、歴史、荘厳さはない。建築中や取り壊し前の廃墟など発展する大都市の〃今〃を切り取ったものだ。
 『未完の建物や時が経過した廃墟など作り手が意図しない造形』『情報手段の発達にも関わらず、忘れ去られたまま消えゆく建築の風景』をタイトルに込める。
 「開発目覚しいサンパウロには、明日にはなくなる風景が沢山ある」と街を歩いた。「身の周りの私的なできごとを撮っても他者との繋がりは持てない。一歩踏み出した領域にこそ話題があるのでは」
 96年、日伯交流協会16期生としてバイーア州サルバドール市に滞在。渡伯前に祖父からカメラを贈られた。
 教会やカンドンブレーの儀式をファインダー越しに眺めた日々を「当時は旅行者の視点しかない。自分とは別世界のものごとを撮って楽しんでいた」と振り返る。
 サンパウロ市に移り住んで13年目。「風景写真を撮り発表することで、サンパウロの記憶の蓄積に貢献できれば嬉しい」と今回受賞を素直に喜ぶ。
 「これからも街並みを取り続けていきたい」と引き締めた表情に〃パウリスターノ〃としての自負がチラリと覗いた。
     ◎
 受賞作の展示は来年1月20日から約1カ月間ギャラリーFUNARTE(Alameda Nothmann, 1058, Campos Eliseos)で行われる。