アマゾナス連邦大=日本語学科が今年新設=高拓二世の願い叶う=夢を胸に18人が学ぶ

ニッケイ新聞 2011年11月2日付け

 アマゾン日系社会の願い叶う—。アマゾナス連邦大学(マナウス市)に今年8月、日語学科が開設され、現在18人が学んでいる。09年の日本人アマゾン移住80周年で機運が高まり、同大、西部アマゾン日伯協会、アマゾン高拓会が準備に奔走、今年の高拓生80周年にあわせた。アマゾン高拓会の佐藤ヴァルジール会長(59、二世)は「戦争の影響もあり、我々は日本語教育のないまま育った。父母の言葉と文化をアマゾンの地で伝えていければ」と思いを語った。

 アマゾン高拓会は、アマゾン開拓のため、(日本高等拓殖学校)で訓練を受け、1931年から来伯した248人の高拓生二世らでつくる。
 ジュート栽培でアマゾナス州の経済に大きく寄与したものの、戦中に資産や土地の接収、日本語使用が禁止された歴史がある。
 「奥地に住む両親と離れて暮らし、ブラジル学校に通った二世の多くは日本語を学ぶ機会がなかった」と話す佐藤会長によれば、「マナウスには日系企業、また日本文化に関心を持つブラジル人が多いこともあり、日語学科の設立はアマゾン日系社会の願いだった」と喜ぶ。
 高拓二世で同連邦大の中島ジェルソン前副学長が中心となり、同大教授で日本移民を研究するミシェリ・ブラジルさん(34)も力を貸した。
 日本文学や文化も学習し、卒業時は日本語語検定2級を目指す。開設から受験までの期間が短かったせいか、30人の定員ながら約半数の18人が学んでいる。
 ミシェリさんは「漫画や日本文化に興味があったり、領事館やオートバイ工場で働いていたり、留学を目指したりと入学の動機は色々。新設されたと知って興味を示す他学科の学生もおり、来年はもっと増えるはず」と期待を寄せる。
 西部アマゾン日伯協会の同協会日本語学校(生徒約700人)の教師も務める錦戸みどりさん(49、二世)と息子の実さん(25、三世)が教壇に立つ。
 「知識の差はあるけど、どの学生もとても熱心」と二人はやりがいを表情に滲ませる。
 辞書や資料が揃う教員室には、授業開始までの時間生徒らが和気藹々と宿題に励む。
 「アニメを通じて日本に興味を持った」というダニエル・バホスマトス君(20)は「将来は日本でエンジニアとして働きたい」と目を輝かす。
 アマンダ・ジニスさん(17)とステファニー・パントジャ・ド・マタさん(19)の夢は翻訳家。
 「授業を受けてみて漢字の書き方も分かるようになって、思っていた以上に勉強が楽しくなってきた」と活き活きした笑顔を見せた。