コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年11月4日付け

 十数年遅れて、いろいろなことが日本と同じようになっていく気がする。ブラジル文化の特徴かと思っていたことが、ただ単に資本主義経済の進展の遅れだったと気付かされることが多い▼例えば90年代のデカセギは「日本の小学校にはイジメがあるがブラジルにはない」と言っていたが、今世紀に入って当地の学校でも一般化した。あの頃、「大家族の生活に慣れたブラジル人はけっして一人で外食しない」とまことしやかに言われていたが、今では女性が一人で食事するのを見るのは珍しくない。かつてブラジル人は日本の家を「うさぎ小屋」とバカにしていたが、今のサンパウロ市の新築アパートは日本の団地とあまり変らない▼90年代にはサンパウロ市のメトロには通勤ラッシュは存在せず、東京の地下鉄で乗客を押して押し込む様子をテレビのニュースで冷笑しながら紹介していたが、今では山手線を髣髴とさせる時間帯がある。かつて「ブラジルには痴漢なんてセセコマシイ犯罪はない。やるなら強姦」と言われたことがあるが、今ではメトロで痴漢がでると聞く▼日本ではとっくに当たり前だった缶ビールが、90年代後半からようやく一般化し、今世紀に入って携帯電話やデジカメ、パソコンがあっという間に普及した▼ハイパーインフレに苦しんだ90年代前半と今世紀を比べると、日本の高度経済成長期を思わせる変化振りだ。10年ちょっと前に東洋街の中古アパートを友人が5万レアルで購入した。同じ建物内の物件が今なんと20万レ以上で売りに出されていると聞き「バブルだ!」とピンときた。日本は20年近く前にバブル崩壊したが、さてブラジルは・・・。(深)