【高拓生入植80周年】「親の汚名を晴らした」=州政府の正式謝罪を実現=歴史に刻まれる「絆の日」

ニッケイ新聞 2011年11月25日付け

 ジュート栽培をアマゾナス州の一大産業に発展させた日本高等拓殖学校卒業生(高拓生)が、今年で入植80周年を迎えた。1942年9月に陸軍により農場や資産を強制接収、あるいは迫害され、苦い思い出と共存してきた高拓生。その子孫らが設立したアマゾン高拓会(佐藤ヴァルジル会長)が10月25日、州都マナウス市にある州議会で州政府による正式謝罪を実現させた。7回生の東海林善之進さん(97、仙台)や高拓生の親族約200人が訪れ、アマゾナス州に新たな歴史を刻み、夜は祝賀会で盛大に記念すべき一日を祝った。

 高拓生である親の苦渋を横目で見ながら「この歴史を忘れ去ってはいけない」と、01年に二世らが中心となって高拓会を立ち上げた。80周年に向けて記念誌『A SAGA dos KOUTAKU no AMAZONAAS』(206頁、ポ語)を刊行、西部アマゾン日伯協会と連携しアマゾナス連邦大学に日語学科を開設するなど、多くの事業を手がけた。
 また州政府に対しては、パリンチンス出身の親日家、トニー・メディロス州議を通し、謝罪および高拓生の歴史的意義を認めることを要求していた。
 「議会の承認を得るのは簡単ではなかったが、ジュート栽培を受け継いだ現地人による日本人への尊敬は深く、そのことも大きな手助けとなった」と佐藤会長(59、二世)は喜ぶ。
 25日の式典には知事代理のジョスエ・ネット州議員、長沼始在マナウス総領事、アマゾナス日系商工会議所の牛田肇副会頭らが列席、高拓生事業の創始者故・上塚司氏の孫の芳郎さんも東京から駆けつけた。
 今回承認された法案により、高拓生に対する迫害への正式な謝罪が行われたほか、本議会のあった10月25日が「絆の日」と制定され、高拓生のジュート栽培における貢献および歴史を同州の公立学校で教えることも義務付けられた。
 法案発表の際は、感極まった出席者が立ち上がって大きな拍手が送られた。
 トニー州議は挨拶の中で、「深刻な経済危機の時代に、ジュート栽培によりブラジルに富をもたらした高拓生の歴史が、今日からアマゾンの住民に広く知られる」と力を込めて語った。
 ベラルミノ・リンス州議も「今日は我々にとっても大変意義深い日。『絆の日』の名のごとく、これから更に両国の絆が深まることを願う」と話した。
 続いて、同州の発展に寄与したとして、東海林さんおよび千葉さんには名誉市民章が贈られ、上塚さんや佐藤会長、高拓生の未亡人らにも表彰が行われた。
 東海林さんは壇上に達者な姿を見せ、「今回のことは一生の思い出になるでしょう」と話し、本紙取材に対し「皆苦労したけど、それが報われました。子孫がよく頑張ってくれたおかげです」と誇らしげに語った。
 千葉さんの代わりに賞を受け取った孫の千葉ワルテルさんも、「祖父だけではなく、高拓生全員に頂いたものだと思っています」と喜びをかみ締めていた。