世界の邦字紙から=米国=他人種婚はアジア系最多=最新の日系人統計を発表=日系市民協会と大学が調査

ニッケイ新聞 2011年11月26日付け

 今回から北米報知(英=The North American Post)とも記事交換を始めた。アメリカ合衆国のワシントン州シアトルで発行されている邦字新聞で、前身の北米時事の設立は1902年と古く、北米最古の伝統を誇る邦字紙だ。この「世界の邦字紙から」頁では、世界の邦字紙と連絡をとり、日本人・日系人の目を通してみた世界情勢や日系社会の動きを伝える。すでにアルゼンチンの「らぷらた報知」、米国の「ハワイ・パシフィック・プレス」、「ABJ(ア・ベ・ホタ)通信」(ボリビアのサンファン日ボ協会発行の月刊機関誌)などと記事交換をしている。(編集部)

 【北米報知10月26日付け】全米各地の日系人に関する最新調査結果が19日に発表された。市民団体「日系市民協会(JACL)」とメリーランド大学アジア系米国人研究学部による共同プロジェクトで、全米に広がる日系人社会の動向をさまざまな項目から追っている。 
 全55ページからなる統計資料は、「日系人のこれまでの歴史」2009年度国勢調査をもとにした日系人の米国内における状況▽日系人人口の多い10都市で生活する関係者のインタビューの3部構成となっている。調査チームは「現在の日系人と日系社会の変遷を分かりやすくまとめることができた」としている。
 資料によると、日系人人口は米国総人口の0・4%にあたる約110万人。中間年齢は47歳で、10年前の42歳から5歳上昇した。米国人全体での中間年齢36歳と比較しても、高齢化が加速していることが分かった。他人種同士での結婚率はアジア系の中でもっとも多く50%以上となっている。
 日系人統計で興味深い点として、第2次世界大戦後から現在にかけて日本人女性が国際結婚で移住していることもあり、女性人口は57%、日本からの移住者に関しては68%に達している。長い日系社会の歴史を持つ西海岸の一部都市では日系人人口の減少が見られるが、東海岸では軒並み増加の傾向を見せている。
 雇用状況は日系人が人種ごとの比較において失業率がもっとも低く、5割以上が学士以上の学位を取得している。貧困層に含まれる日系人は全体で7%だが、日本からの女性移民者はやや多く1割になる。また日系人女性は秘書や一般職での就職が多く、男性に比べ管理職での雇用機会が圧倒的に少ない調査結果も出た。
 言語面では米国生まれの日系人の82%は英語以外を話せず、バイリンガル人口は36・5%で他のアジア系と比較しもっとも低い。一方、25歳以上で自宅で日本語を使う人口は43%と、英語を使うとする53%に肉薄している。
 関係者のインタビューでは、現在が日系人の歴史の中で差別や経済環境から最も恵まれた状況にあるとの指摘があった。また世代や他人種同士の婚姻が増えていく中、コミュニティー同士や日本との繋がりを保つこと、日系ヘリテージ(編註=伝統、遺産)の維持が今後の課題として挙げられている。
 ワシントン州は全米で4番目、都市レベルではシアトルは6番目の人口を誇る。シアトル地域の日系人人口は約3万8000人で、そのうち2つ以上の人種背景を持つ日系人は約1万3000人だった。男性人口は38%のみで女性人口がかなり多い。外国出身が44・6%を占めるが、そのうち市民権取得者は28にとどまっている。
 調査結果はwww.aast.umd.edu/japlreport.phpで見ることができる。(N・A・P)