JICA芳賀所長が退任=日系社会とは協力関係へ=ブラジル社会への窓口に

ニッケイ新聞 2011年11月26日付け

 JICA(国際協力機構)ブラジル事務所の芳賀克彦所長(52、宮城)が23日、3年1カ月の任期を終えて日本へ帰国した。後任には21日付で室澤智史氏(54)が着任している。
 芳賀氏は帰国後、国内事業部次長として日系研修生受け入れや各団体・自治体との連携を図る。
 08年10月にJBIC(国際協力銀行)の海外経済協力業務、無償資金協力業務を統合して組織された〃新〃JICAと共に歩んだ3年間を振り返った。
 組織改変の一番の変化として、芳賀氏は円借款業務を挙げた。ブラジルでは都市機能・衛生環境改善のため5つのプロジェクトに拠出。聖、ミナス、パラー3州で水源保全、無収水対策、下水処理施設建設事業に899億円が投じられたことで、「ODAの枠内でできなかった規模で協力が可能になった」と話す。
 また、従来から継続してきた技術協力分野では、二国間の枠組を超え、日伯共同プロジェクトとして第三国を支援する動きが出てきた。
 ブラジルで70年代に始まったセラード開発の技術・経験を生かし、日伯間でモザンビークの熱帯サバンナを農地として開発する「三角協力」を推進。
 ブラジル事務所でも日系農業技術者の派遣を計画していることに触れ、「人口70億人に達した世界の食の安全保障に、日伯で培われた技術が貢献できる」と期待する。
 一方、日系移住者支援に関しては「日本政府の方針で振り分けられる予算は減っている」。
 現在も日本語教師派遣などの要請は各地日系団体から届き、必要性は感じているというが「派遣人員数はここ三年で増加したが、同じ場所に継続して派遣することは難しい。現地での教師育成の側面もあり、あくまで自助努力を促していく姿勢」と話す。
 しかし、日伯援護協会が経営するPIPA(自閉症児青空学級)への専門家派遣、設備投資など積極的な支援を予定しており「ブラジルにとって重要な事業でJICAの目的にも合致する。これからは援助をする側される側という関係から離れ、今後は協力関係を結び、日系団体を通してブラジル社会に貢献していくことが重要」と展望を述べた。