コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年12月3日付け

 今や世界の人口は70億人を突破し、華々しい21世紀と申したいが、イランの学生デモが英大使館に乱入したり、イスラム過激派の凶暴なテロと恥じ入ることばかりが続く。それでも、人類は増えに増えあのガンジーのインドはまもなく10億の壁を突破し、中国を追い抜き世界一の看板を掲げる勢いだし、このままでは我らが地球も人の重さで沈むのではないかと、いささか心配にもなる▼そして—俄かには信じ難けれども、あの広い海には海賊が跋扈し、マドロスパイプを咥える船乗りたちも戦々恐々。日本の生命線マラッカ海峡があるインドネシアもだが、近頃は「アフリカの角」のソマリア海賊の狼藉が酷い。紅海とインド洋が接するあの国は、その昔—交易が豊かで富も溢れていた。1千年を超える歴史をもつアラビア商人の「ダウ」が寄航し港は賑わい物品が満ち、古代エジプト人も大いに羨ましがった▼そんなソマリアだが、1960年に独立してからは、政争や内戦の殺し合いばかりで只今も「無政府」状態で飢餓状況にある。このため漁民らが手っ取り早い収入源として「海賊」になったようだ。ロケット砲などで武装し快速艇でタンカーなどを急襲し、船員を人質にして身代金を要求する手口で日本の船も襲われている▼こんな事態を重く見た米英独と海上自衛隊も護衛艦を派遣し警戒中だが、それでも海賊は動く。米軍は海賊を捕らえ200年ぶり、独は400年ぶりに海賊裁判を開き実刑を言い渡したが、海賊らは少しも怯むことなく堂々とタンカー攻撃を繰り広げるのだから、これはもう驚くしかない。(遯)