コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年12月6日付け

 今や地方政治がおもしろい。国会で与野党が火花を散らす派手さはないが、あの「難波の都」の賑々しくも颯爽とした橋下徹氏の言動には戦場の若武者を想わせるすがすがしさが漂い、庶民からは拍手喝采が沸く。弁護士稼業を投げ打ち大阪府知事に当選。「君が代」の斉唱で不起立のセンセイには厳しい条例で立ち向かい—「大阪維新の会」を旗揚げの豪気な政治家と見たい▼と、商人の街を見つめていたら今度は府知事を辞任し大阪市長になるんだと出馬宣言。知事には仲間の松井一郎氏が立候補し大阪の街には「維新旋風」が吹き荒れ、ご両人は他の候補を吹き飛ばしての圧勝。それもこれも、橋下新市長が唱える「大阪都」構想の実現を目指した政治潮流の一つ。この大阪の動きには、野田政権も注目し「都計画」を検討したい意向を示したし、東京の石原都知事も「大大阪大いに結構」とエールを送った▼この考え方は、いわば地方分権であり、愛知県と名古屋市や新潟県と新潟市でも既に取組みが始まっている。名古屋は「減税」を選挙公約にして市長選挙を戦い勝利したし、大村秀章知事は「中京都構想」を掲げている。一方の新潟県は泉田裕彦知事が「新潟州」を主張するなど地方分権への活動は全国的な規模に広がっていることに、もっと目を向けたい▼橋下市長と松井知事は「都構想協議会の条例」法案を府と大阪・堺市議会に提出するなど「大阪都」へと動き始めている。これらは近い将来には「道州制」の論議にもなるだろうし、日本列島の大きな政治課題になると信じたい。(遯)