コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年12月9日付け

 8日に120周年の節目を迎えたサンパウロ州の〃顔〃パウリスタ大通り。今年のXマスの飾り付けは例年より豪華な感じだ。真っ赤な厚手の上着を着こんだ巨大なサンタ(人形)があちこちに座り込み——こう言ってはなんだが——見るからに暑苦しそうだ▼夏の南米なんだから水着姿とか、黒いマリア様で有名なアパレシーダのようにアフリカ系サンタを採用してもいいのではとも思うが、あくまで北半球の伝統に忠実だ▼この通りを設計したウルグアイ人のジョアキン・エウジェニオ・デ・リマ技師は「サンパウロ州民への顕彰としてパウリスタ大通りと名付ける」との言葉を残している▼1909年、ドイツから全ての材料を輸入してアスファルト舗装したのは、欧米でさえ舗装が珍しかった当時、大農場主の邸宅が立ち並んでいた頃の珈琲景気の名残だ。ちなみに今年は、パリのオペラ座をモデルにしたサンパウロ市立劇場100周年でもあった▼サンパウロ市の中心、セー大寺院は1913年に建造が開始され、二度の世界大戦に邪魔をされ、ようやく1954年に開所式にこぎつけた。つまり1910年前後、笠戸丸が着いたころに現在のサンパウロ市の主だったものの形が生れた。日本移民とサンパウロ市の発展は表裏一体だ▼地形的に見ると、同大通りがサンパウロ市で一番小高い丘になっており、テレビ塔が集中している。地下鉄も「パライゾ」(天国)から始まって「コンソラソン」(慰め)に終わる。実にカトリック大国らしい駅名だ▼今週末から日本で行われるクラブW杯で、かつてカズが活躍した強豪サントス(やはり1912年創立)が世界一になれば、きっと同大通りで盛大な祝勝会が開かれるに違いない。(深)