日伯社保協定が3月に発効=社会保険労務士市川氏に聞く=「仕組みを知ること大事」

ニッケイ新聞 2011年12月10日付け

 日本の厚生労働省は7日、日伯社会保障協定を来年3月から発効させることを発表した。これにより、年金加入期間を日伯間で通算することができるようになる。保険料の二重掛けが避けられることで企業負担が減り、ブラジル進出への追い風になるとも見られる。保険料が掛け捨てになる可能性から、国民健康保険にも加入しない在日ブラジル人の生活改善も期待される。新制度にいち早く対応するため、10月末に来伯した市村社会保険労務士事務所(東京都)の市村靖治所長(48、東京)に話を聞いた。

 「年金制度は学校や会社でも教えてもらえず、複雑で日本人でも理解が難しい」と語る。すでに在日ブラジル人に説明会を実施したが、手ごたえは薄かった。「両国の年金制度を分かりやすく小冊子にまとめて配布し、彼らの理解に役立てたい」と意欲を見せる。
 保険料最低納付期間はブラジルが15年、日本は25年のため、日本で14年加入していれば協定発効後、ブラジルでの1年間加入により年金受給資格が手に入る。
 しかし、「仕組みをよく知らないまま脱退一時金を申請し、納付期間が白紙になってしまった人がいる」と問題点を指摘する。
 脱退一時金制度とは、保険料納付期間が6カ月以上ある外国籍所有者に対し、出国を前提に加入期間等に応じて一時金を支給する制度を指す。
 加入期間が3年以上の場合は金額が一律となるため、「自分の年金納付期間を調べた上で、脱退一時金を受給した方がいいかどうかを慎重に決定する必要がある」と強調した。
 また「脱退一時金の代理申請で、高額のサービス料を請求する業者もある」と当地の対応に警鐘を鳴らす。「ブラジルの大手サービス業者は受給額の3割をサービス料としている。更に2割の所得税が差し引かれるので、申請者の手元には半額しか残らない」。
 所得税の還付請求も可能だが、納税管理人を立てるか本人が確定申告する必要があるため手続きは煩雑だ。
 〃安くて楽で安心なサービス〃がモットーの市村所長は、「還付請求で払い戻された分を代理申請のサービス料とすれば、申請者に8割が残る」と新サービスを検討している。
 また当地の社会保険労務士と提携し、両国における年金納付期間の調査や、年金申請の手続き代行サービスも検討中だという。
 「まずは仕組みをよく知ることが大事。連絡を頂ければアドバイスもします」と話している。
 問合せは同事務所のサイト(www.ichimura-sr.com/sub4.html)まで。