コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年12月17日付け

 南シナ海での領土紛争や空母建造を目指すなど中国海軍の増強には目を見張る。日本の「防衛白書」も中国の軍事強化を脅威とし、アメリカも警戒の目で見ている。こうした軍事的な力を背景とした中国の漁船団が、日本や韓国などの領海や経済水域を侵犯し堂々と不法な漁業をしているのは目に余る。黄海の韓国経済水域で中国漁船が不法操業し、取締まりの韓国海洋警察の隊員が船長に殺害されたのも、こうした事件の一つにすぎない▼さすがの韓国も怒り心頭に発し、予定されていた李明博大統領の訪中を延期するの報道もあり、緊迫した空気が流れもした。なにしろ、今年に入ってからだけでも中国漁船が500隻近くも韓国の海に押し寄せ不法操業したため韓国海洋警察はこれらの漁船を拿捕している。いかに海軍の砲術外交が強くても、こんな無法が許されるはずが無い。今や超大国になった中国外務省も「遺憾」と表明したが、抜本的な考え方を改めないと、事件は再発する可能性が高い▼この韓国の強い態度に比べると、あの尖閣諸島沖に侵入した中国漁船の船長を逮捕したのに—そのまま釈放した民主党の菅内閣(当時)のだらしのなさが何とも苦々しい。あれも、中国政府へのご機嫌取りとして外務省あたりの差し金だろうが、法を破った者には厳しく—である。ところが、自民党の石原伸晃幹事長がワシントンでの講演で「中国は好戦的」と中国の軍拡を批判し、尖閣諸島にも自衛隊常駐をと論じたのは、将に正論であり、民主党も学ぶべきは多い。(遯)