コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年1月3日付け

 除夜の鐘の響きを耳にしながら百八煩悩を消滅しての新年は如何でしたか。遯生は都心暮しであり、寺の鐘には遠くTVの花火打ち上げを観てさすがはリオだなと感嘆しながらの年越しと新年を迎えた。サンパウロでも浄土宗の日伯寺には故宿屋忠八氏が鋳造した鐘があり、大晦日の12時前から撞き雑煮を振舞っているのに参加したことがあるけれども、なかなかにいい風情だった。確か、西本願寺と東本願寺にもあり、百八の鐘を撞いていると聞く▼初夢は「一富士二鷹三茄子」の吉夢ならいいのだが、そうではなくとも新しい年の楽しいものなら万万歳である。ブラジルの一世移民らにとって本物の屠蘇はなかなか手に入りにくく、ちょっと難しい。ここはちょっぴり奮発して東麒麟の純米醸造酒を赤い銚子と盃に注ぎ正月を祝い、家族の健康を祈りたい▼正月となれば、雑煮が日本人の暮しの決りながら、これは地方色が豊かであり、餅も関西風は丸く、関東や東北では四角い切り餅だし、汁も味噌味や醤油と多彩極まりない。具も異なり東北の一部ではイクラと牡蠣や海老の大きいのをいっぱい入れてなかなかに美味い。お節料理も、黒豆や鱈子といった食材のこともあり、伝統の味をブラジルで伝承するのは容易ではない。日本ではデパートなどが3万円から4万円ほどで販売しているが、名門・京都・吉兆のは20万円超と値段も張る▼最近はサンパウロでも日系のホテルなどで「お節」を提供し、それなりの価格ながら商社の人々にはかなりの人気らしい。と、辰の年は始り、今年は龍の如くに元気に溌剌と参りたい。(遯)